1993 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ中世における貴族制の展開と領邦的国制への移行に関する研究
Project/Area Number |
05610314
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 良久 京都大学, 文学部, 助教授 (00164872)
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Keywords | ヨーロッパ中世 / 貴族 / 貴族家門 / 領邦 / ラント / 親族関係 / オーストリア |
Research Abstract |
1.ヨーロッパ中世の貴族史研究の動向をG.テレンバッハ、K.シュミットを中心とするフライブルク・グループの研究成果と最近の批判的研究をふまえて検討した。そしてシュミット等のいう、広域的な権力基盤と広い双系的親族関係、王権との密接な結合を特色とするカロリング的帝国貴族から、11世紀以後の父系的貴族家門へという移行の時期、要因は多様であり、また家門形成は地域の権力構造に強く規定されたことを明らかにした。 2.O.ブルンナーの「ラント」概念を検討し、ドイツにおける12,3世紀のラント=領邦形成の初期段階は何よりも貴族の人的団体として捉らえねばならないこと、従ってランデスヘルのイニシアチヴの下に一定領域の貴族が政治的団体としてのラントに統合される過程は、こうした貴族の存在形態と活動の実態から明らかにされねばならないことを指摘した。 3.以上を踏まえ、バイエルンを中心とするドイツ東南部における10〜12世紀の貴族制の展開を実証的に考察し、次の点を明らかにした。 (1)叙任権闘争以前の有力貴族は国王と密接に結びつき、バイエルンからオストマルク(オーストリア)など辺境地域に広く所領や親族関係のネットワークを持つ広域的貴族で、彼らに対するオストマルク辺境伯の政治的影響力はなお限定されていた。 (2)12世紀前半のうちに有力貴族家系の分化と家門化、一定の地域化(在地化)が進行し、この傾向は中、下級貴族ではより顕著であった。こうした家門化、地域化は貴族が一定領域内の利害(所領・平和・秩序)に関心を強める契機となった。 (3)オストマルクを中心に地域化した貴族は、辺境伯の司宰する裁判集会に頻繁に出席するようになり、こうした集会を基盤として地域の「平和・秩序」を維持する政治的共同体としてのラントが、12世紀前半の辺境伯レオポルト3世時代に成立した。
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Research Products
(1 results)