1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05610323
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Research Institution | CHUO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中田 一郎 中央大学, 文学部, 教授 (50119541)
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Keywords | メソポタミア / 楔形文字法 / アッシリア学 / ハンムラピ法典 / エシュヌンナ法典 / バビロニア |
Research Abstract |
本研究課題は、楔形文字法典の邦訳、法典の性格の検討、公刊史料集に散見される裁判文書に見られる法と法典に見られる法の比較、の3つを目的としていた。研究実施計画(1)に記した史料集および参考文献の収集はかなりの程度達成できたと言える。同(2)のハンムラピ法典とエシュヌンナ法典の完訳に関しては、エシュヌンナ法典の邦訳は手付かずに終わったものの、前書きおよび後書きを含むハンムラピ法典全体の邦訳を完了することができた。ハンムラピ法典は、他の法典に比べて、分量的にはるかに多いので、同法典の邦訳だけで当初の邦訳計画の約8割の作業を終えたことになる。同(3)の法典の性格の再検討に関しても、少なくともハンムラピ法典の前書き部分に関しては現存写本の比較検討から成立年代の異なる複数の「オリジナル」があったこと、また同法典の一部のシュメール語訳が存在した可能性があることなどが想定され、同法典の複雑な成立過程を推定する必要があるとの知見を得た。同じく研究実施計画(4)の裁判文書の収集・整理については、史料の収集・整理はある程度出来たが、本来の目的の1つであった裁判文書に見られる法と法典に見られる法の比較研究については、法典がシュメール時代から存在する語彙・句集等と同じ系譜に立つ法集であって、法的拘束力をもった所謂法律ではないこと、それにもかかわらず当時の裁判文書に見られる法的実態とかならずしも矛盾しないこと、等の知見を得るに留まった。エシュヌンナ法典および極く断片的な形でしか現存しないシュメール語法典の邦訳、および当時の裁判文書の一層の整理分析などは今後の研究課題として残さざるを得なかった。なお、本研究成果の一部は、平成7年度の中央大学文学部紀要に発表する予定である。
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