1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05610336
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Research Institution | Tsuruga Junior College |
Principal Investigator |
網谷 克彦 敦賀女子短期大学, 日本史学科, 講師 (60249175)
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Keywords | 木製遺物 / 縄文時代 / 柄 / 櫂 / 鳥浜貝塚 |
Research Abstract |
木製品約2500点を13器種に概括的に分類整理し、鳥浜貝塚出土の木製遺物の総体を確認した。次いで、各器種の典型例を実測し、使用された樹種の同定結果を公表するための資料化を実施した。更に本年の研究対象である柄185点と櫂62点について詳細分類を行い、観察結果のカード化や実測を進め、以下の新たな知見を得た。 1.柄形木製品はすべて膝柄で、柄台部とシャフト部とのなす角度から鋭角型174点と広角型11点の2群に大別する。鋭角型は完成品の台部形態から4類に細別でき、1類は縦斧、2類は横斧の柄に対応し、3・4類は漆膜を遺存した例を含み、骨製ピンその他を装着する儀器的・装身的性格を推定せしめるものである。また鋭角型の72%を占める未製品を製作技術的に観察した結果、完成品1類、2類、3・4類への帰属が明らかになり、製作から使用までのプロセスの具体的な復原が、細分器種毎に可能となった。 2.考古学的に正当な型式分類に基づいて使用材の樹種を検討した結果、細分器種単位で強い選択性が存在することを明らかにしえた。すなわち、縦斧の樹種ではユズリハ属が80%にのぼり、これにスダジイ、カエデ属を加えると90%に達する。一方、横斧他はクマノミズキ類が主体でクヌギ節をあわせて80%に及ぶ。また広角型はヤブツバキが主で、クヌギ節とで82%を占めていた。森林資源に対する認識の程度や選択規範を明らかにすることは、石製利器の時代の木工技術を復原する上できわめて重要である。 3.柄全体の83%を占める縦斧柄は、ソケットと緊縛紐固定用の段との位置関係や段の形態から、縄文時代前期のうちで3期5型式に変遷することが判明した。縄文時代の木器に関する型式学的編年研究の〓矢といえる。
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