1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05610336
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Research Institution | Tsuruga Junior College |
Principal Investigator |
網谷 克彦 敦賀女子短期大学, 日本史学科, 講師 (60249175)
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Keywords | 木製遺物 / 櫂 / 容器 / 弓 / 代栽 |
Research Abstract |
本年度は研究課題として3テーマを設定し、それぞれ以下のような成果を得た。 [A]前年度に資料化を進めた櫂について、補充調査を行い型式学的に検討した結果、柄頭の型式変遷が明らかになった。柄頭には主系列と副次系列とがあり、主系列は北白川下層IIa式の時期に2もしくは3亜系列に分岐し、その後それぞれ漸移的な形態変化を示す。副次系列は主系列の形態変遷に対応して、各形態毎に柄頭下端を隆帯状に加工することで主系列と区別するもので、少なくとも主系列が分岐した時期までその存在を認めうる。主系列と副次系列とは用材においても区別される。すなわち、主系列においてはヤマグワとケヤキが圧倒的多数を占めるのに対して、副次系列では両種を用いず、さらに1種1例で優先種が認められない。従来、遺物の1器種に関して1遺跡内での系統変遷を論ずることは、縄文時代研究では土器に限られていたと言ってよく、木製遺物でもこれを議論できれば、文化動態をより重層的に把握できるであろう。特に柄頭の象徴性、技術伝承の性別、2項対立的型式変遷などの究明は、社会組織論に発展しうる可能性がある。 [B]樹皮を残す未製品が存在する柄類を資料化した上で、木材研究者に最外年輪の形成状況を調査してもらった結果、夏から秋に伐採が行われたことが明らかになった。この結果は柄、特に伐採具としての縦斧の特異性を示すものかもしれないが、伐採は晩秋から冬という現在の通念を縄文時代に対しても無批判に適用してよいものかどうか問題を提示することとなった。 [C]容器形木製品は製作工程を考慮した諸属性から2大別3群10類に分類でき、木取りと形態の相関や、形態と漆塗との関係、用材樹種と漆塗との関係などが判明した。固体識別できた100点中、漆膜を保存する例が7割以上を占め、漆器が木製容器の一般であったとみられる。また弥生時代になって出現するとみなされてきた縦木取り容器が前期後半に出現すること、さらにこれが三足器という特殊な器形を呈することも明らかになった。
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Research Products
(1 results)