1995 Fiscal Year Annual Research Report
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05610336
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Research Institution | TSURUGA WOMEN'S JUNIOR COLLEGE |
Principal Investigator |
網谷 克彦 敦賀女子短期大学, 日本史学科, 講師 (60249175)
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Keywords | 木製遺物 / 弓 / 尖り棒 / 杭 |
Research Abstract |
本年度は最終年度であるため、鳥浜貝塚出土の木製遺物の中で重要な位置を占める柄、櫂、容器などを再検討すると共に、全容を資料提示するうえで、なお不十分と思われた資料に関して実測をすすめた。また、観察、分類が不十分であった弓・尖り棒の類、および整理未着手であった杭に関して、観察・分類・資料化をすすめ、以下のような知見を得た。 弓・尖り棒の類は、両端を尖らせた弓1類、一端は尖り、他端は偏平に加工した尖り棒(弓2類)、漆塗りや樹皮巻の飾り弓(弓3類)と、全長30cm前後で両端を弓弭状に削り残した、穿孔用の小型弓とに大きく分類しうる。弓と尖り棒は尖らした端部の破片例では区別しがたい。全形が遺存した例をもとに弓1類をみると、そのサイズにより全長150cm以上、120cm前後、70〜80cmの3類に分れる。後二者には皮付きのものが含まれたり、アカガシ亜属を主とするなど弓と認定しがたい例を多く含む。出土傾向として前期前半に偏り、後半には認めにくい。一方、尖り棒(弓2類)は前半は僅少で後半にきわめて多い。使用樹種も前半はアカガシ亜属が優先し、後半はムラサキシキブ属が卓越する。尖り端のみの例を加えて検討しても、使用樹種を考慮すれば弓1類と尖り棒の出土傾向はかわらない。石鏃の出土量は後半に圧倒的に多く、弓の出土量も同様な傾向を示すとの仮定が許されるとして、従来の見解に従い、弓1類を「弓」と認定すれば、尖り棒もまた弓である可能性を認めねばならない。しかし使用樹種およびその性状、確実に弓と認定できる飾り弓との比較などから、尖り棒(弓2類)を「弓」とはしえない。よって、弓1類の多くを弓とせず、別の機能をもつ、尖り棒と同種のものと認定し、弓の多くは集落内で廃棄されなかったとみるのが妥当であろう。
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Research Products
(1 results)