1994 Fiscal Year Annual Research Report
都城・国分寺・国府・三関・その他の寺院における八世紀同笵軒瓦の系統的研究
Project/Area Number |
05610339
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Research Institution | Nara National Cultural Properties Research Institute |
Principal Investigator |
山崎 信二 奈良国立文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 考古第三調査室長 (10090375)
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Keywords | 軒瓦の同笵関係 / 文様の類似度順 / 都城の瓦の生産地 / 板作りと紐作り軒平瓦 / 笵型移動、瓦自体の移動 / 技法上の類似性 / 国分寺瓦の文様構成上の分類 / 丸瓦の変遷とその地域差 |
Research Abstract |
まず、藤原宮瓦と同笵関係にある近江・和泉・讃岐・淡路産の瓦の再整理を行ない、それぞれが藤原宮瓦の生産地であることを確認した。また、讃岐東部の資料(願興寺出土)と山城の資料(大宅廃寺)が藤原宮瓦と同笵であることを新たに発見した。また、藤原宮式・老司式軒平瓦の出現と共に、従来の板作り軒平瓦から紐作り軒平瓦に突然一斉に変化することを明らかにした。 次に、平城宮と同笵の瓦および平城宮式軒瓦については、平成5年度に主要な調査を行ない、その成果を『平城宮・京と同笵の軒瓦および平城宮式軒瓦に関する基礎的考察』として印刷刊行したが、平成6年度では平城宮式と呼べない範疇に属する、各地の国分寺出土瓦についても文様構成上の分類を行なった。 まず、平城宮式軒瓦の分類として、A型(同笵)、B型(以下異笵:現物照合によってはじめて異笵と判明するほど酷似するもの)、C型(型式番号だけでなく種まで確定できる)、D型(種の類似点まで確定できない)、E型(どの瓦をイメージしたかが推定できるもの)、F型(軒丸瓦か軒平瓦の一方が、全く異なる文様構成をもつもの)に分けた。B型が信濃、C型が美作、E型が上総、F型が駿河(それぞれ国分寺出土例)である。さらに他の国分寺・国分尼寺・国府出土瓦については、I畿内寺院と同笵の瓦より派生したもの(河内・丹波・尾張・伊賀)、II平城京の組合せを祖型としたもの(三河・飛騨・越中)及びその他(紀伊・淡路)、III重圈文系(上総・阿波・備後)、IV新羅系(下総・出雲)、V平安京系(伊勢・薩摩)、VI在地国分寺系(遠江・相模・甲斐・常陸・美濃・上野など)、VII九州系(壱岐を除く、九州各国分寺)、VIII先行寺院転用系(伊豆・美濃・能登)などに分類した。IVとした新羅系については、下総など新羅と同じ「包み込み」の軒平瓦であることが注目できる。 最後に、もう一度、日本の造瓦史全体を見通す必要があると考え、古代から中世および近世初頭までの丸瓦の変遷について調査を行ない、大きな成果を得た(例えば、九州では畿内や関東にみられる室町時代スタイルの丸瓦は導入されていない)。この成果をもとに、再び8世紀の丸瓦の変化とその地域差についての見通しを得ることが課題として残った。
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Research Products
(1 results)