1993 Fiscal Year Annual Research Report
古活字本印刷家と著作権揺籃期の「本文意識」(ドゥ・ウォードの仕事を事例として)
Project/Area Number |
05610392
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
向井 剛 鳴門教育大学, 学校教育学部, 助教授 (40136627)
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Keywords | Textual Study / Chaucer / Caxton / de Worde / Canterbury Tales / Parliament of Fowls / Early Printings / Authors' Rights |
Research Abstract |
予定していた本文調査のうち、特定の庇護者のもとに出版された作品の事例研究として選んだヒルトンのScala Perfectionisの現存写本と初期刊本の本文対校は、当該マイクロフィルムの入手が遅れた関係で、行うことができなかった。しかし、チョーサーのThe Canterbury Talesのキャクストン第2版(1483)とドゥ・ウォード版(1498)の本文校合を済ませ、更に予定外ではあるが、The Parliament of Fowlsの初期印刷本と現存写本の本文調査を行った。この結果、次の3つの知見を得ることが出来た。 1)初期印刷本において、チョーサーの言語は、シンが登場するまでは、近代化および合理化の方向で本文改稿が行われた。 2)評価の定まった作家の作品といえども、言語と綴りが維持される傾向にあるガワーに対し、チョーサーは、1)に見るとおり、言語の近代化という編集を受けた。 3)これは、想定した読者層と関係があり、専ら貴族階級を対象としたガワーに比べ、チョーサーの顧客層は中産階級を狙っていたからと考えられる。 また、本研究の中心主題と直接の関係はないが、Parliamentのリサーチを通して、当該作品の本文研究に貢献する新事実を発見した。すなわち、ピンソン版は、キャクストンではなくBodley638に近い写本をエグゼンプラーにしていること、ドゥ・ウォード版は依拠した写本を補うものとしてピンソン版を参照したことである。
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