1993 Fiscal Year Annual Research Report
アルチュール・ランボーの詩と詩論の歴史性および現代性の研究
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05610396
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川那部 保明 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 助教授 (10169740)
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Keywords | ランボー / ユゴー / ルソー / パリコミューン / アルデンヌ通信 / ロマン主義 / 聖なる詩人 / 見者の手紙 |
Research Abstract |
本年度の研究は、とりわけランボーの詩と詩論の「歴史性」に重点をおいてなされた。「歴史性」とは具体的には、(1)同時代とくにパリ・コミューンにより生み出された状況、(2)18世紀来の文学史の到達点としての1870年代の状況、の二点であり、その歴史的状況のなかでランボーの詩と詩論がどのように独自性を獲得していったかを研究の焦点とした。 (1)地方紙アルデンヌ通信紙上に伝えられるコミューンの劾々の状況変化と、ランボーの二通の「見者の手紙」における「堕者の詩論」への傾斜とのあいだには、同期性がある。彼の詩論生成のこの時代状況との同期性(別言すればランボーの詩論の時代性)を、アルデンヌ通信の記事とランボーの「見者の手紙」との対照により"Rimbaud voyant/communard et le Courrier des Ardennes"において論じた。 (2)(1)の結論にたったうえで、このランボーの詩論は、18世紀来形成されてきたいわゆる「聖なる詩人」の思想およびロマン主義の詩に対する絶対拒否の姿勢としてこそ捉えられるべきであること、従って彼の詩はよく言われるような普遍的「反抗」の詩ではなく、時代に支配的な言説に対する歴史のただなかでの拒否であることを、『聖なるものと想像力』所収の「<聖なる詩人>から<堕者としての詩人>へ」で論じた。 以上の成果に立って平成6年度は「現代性」に焦点をあてることになるが、視野をフランスに必ずしも限定せず、わが国におけるランボー詩の受容という方向からも論じてみたい。本国における影響のみならず、異邦においていかに解釈され受け入れられたかを知ることが、とりわけランボーのように一文化の内なるものとしての自己を拒否した詩人に関しては、その存在の真の射程(それ故その「現代性」)を測るには欠かせないからである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] KAWANABE Yasuaki: "Rimbaud voyant/communard et le Courrier des Ardennes" Amis d'Auberge Verte. 3(予定). (1994)
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[Publications] 山形 和美: "聖なるものと想像力 (予定)" 彩流社, (1994)