1993 Fiscal Year Annual Research Report
国家の戦争行為責任と「戦後補償」に関する実証的研究
Project/Area Number |
05620017
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
古川 純 専修大学, 法学部, 教授 (30096440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森川 幸一 専修大学, 法学部, 助教授 (70134434)
大谷 正 専修大学, 法学部, 教授 (50127198)
小沼 堅司 専修大学, 法学部, 教授 (00103408)
石村 修 専修大学, 法学部, 教授 (10103409)
隅野 隆徳 専修大学, 法学部, 教授 (40083555)
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Keywords | 戦争責任 / 賠償 / 補償 / 日中戦争 / 日韓併合 / 強制連行 / 従軍慰安婦 / 戦傷病者遺族等援護法 |
Research Abstract |
1.本研究は、種々の「戦後補償」請求訴訟で問われている問題について、憲法・国際法・政治学・歴史学の立場から学際的・比較法的に実証研究を行うことを目的としている。 2.われわれが今年度の図書購入・分析・調査出張による資料収集・聞き取り、専門家を招いた研究会・シンポジウムおよび合宿研究会を通じて得た問題解明の成果は、おおむね以下の通りである。 (1)「補償」(ドイツ語のWiedergutmachung)とは、国家間の戦争賠償とは異なり、当該国家の戦争行為によって被害を受けた人々の対する「償い、贖い」を意味し、それを法的に構成しなければならない。 (2)韓国・朝鮮人の強制連行・労務強制および従軍慰安婦の強制、中国人の強制連行はいずれも日本が当時加入していた国際条約に違反し、それらの人々との関係では不法行為責任が発生しており、日本国憲法前文の規定を媒介としてその責任は日本国に継承されていると考えるべきであろう。 (3)政府は条約において補償請求権を放棄することができるが、それは政府の外交保護権の放棄にとどまり、個人の意思によらずに補償請求権を放棄することは許されない。その意味で日韓請求権協定に伴う日本の国内法による韓国国民(ただし在日韓国人を除く)の請求権の消滅規定は、適正手続きによらない人の財産権の剥奪に当たり、違憲問題を提起するであろう。 3.戦後補償問題の早急な解決には、困難な裁判的救済の方式よりも国会会議を経た立法的手当のほうが望ましいとも考えられ、さらに国際的には第三者機関の設置による基金運用の方式も検討されるべきであるが、これらは次年度の研究課題としたい。
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