1993 Fiscal Year Annual Research Report
国連の平和維持機能の新展開-集団安全保障と平和維持活動の交錯
Project/Area Number |
05620022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
位田 隆一 京都大学, 法学部, 教授 (40127543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 啓亘 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 助教授 (80252807)
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Keywords | 国際連合 / 集団安全保障 / 平和維持活動 / 安全保障理事会 / 強制措置 / 平和に対する脅威 / 国際刑事裁判所 |
Research Abstract |
本年度、位田は、とくに旧ユーゴ紛争の解決への過程で現れた国際刑事裁判所について、国連国際法委員会による一般的な国際刑事裁判所との比較で検討を行い、酒井は、とくに安保理による強制措置の合法性と限界について、安保理決議を中心に分析検討した。双方の研究は、緊密な意見交換や関西国際機構研究会での討論を通じて、連関させていった。中間的な形だが、各々論文を準備中である。 ポスト冷戦期の国連の平和維持機能は、憲章第6章と第7章をつなぐ役割を果たすものとして、強制措置発動の要件を定めた第39条の中心的概念たる「平和に対する脅威」に注目して検討分析できる。この概念は、国際的な影響という枠を維持しつつ、人道的援助、民主化支援、反テロリズムといった「国際社会共通の価値」実現のために、禁輸、外交的措置だけでなく、賠償制度や軍縮措置、国際刑事裁判所設置など、強制措置の内容をも多様化させている。それは、強制措置の発動可能性を背景とした紛争の平和的解決措置や平和維持活動、さらに現実の強制措置を、当該紛争地域に重層的に組織する役割も果たしている。 他方、旧ユーゴ紛争に見られる国際刑事裁判所は、安保理の強制措置の一環として設立され、国際裁判によって個人を処罰する可能性を開いたことにより、安全保障・紛争解決・紛争抑止の橋渡し的役割までも期待される。さらに、ILCの国際刑事裁判所案は、こうした展開に一般的に貢献する可能性を示唆するものと位置付けられよう。
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