1993 Fiscal Year Annual Research Report
環境に関する刑法的寄生の研究-環境刑法の成立可能性-
Project/Area Number |
05620038
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
丸山 雅夫 南山大学, 法学部, 教授 (50140538)
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Keywords | 環境 / 環境刑法 / 水環境 / 原子力 / 放射線 |
Research Abstract |
1.本年度は、環境に対する法的保護について、各論的な視点から、特に水および原子力・放射線と環境との関わりを中心として考察を行った。当初は、総論的な観点から環境刑法の保護法益等についても考察を行う予定であったが、各論的な研究に思わぬ時間がかかったために、次年度以降の課題とせざるをえなかった。 2.水と環境との係わりについては、我が国における水環境の行政法的保護のあり方と刑法による保護の可能性とを検討したうえで、我が国と同様の行き方をしているアメリカ法について検討し、それを前提として、水環境を刑法(環境刑法)によって保護しようとしているドイツとオーストリアについて考察して、我が国における水環境の刑法的保護のあり方を考察した。これにより、水環境の行政法的保護および刑法的保護における問題点(どの程度の行政従属性を許容するか、何を保護法益として認めるか、どのお程度の刑罰を規定することが望ましいか等)を浮き彫りにされ、今後の総論的な検討についての方向性が明らかになった。なお、この点に関する成果は、すでに公刊している(「研究発表」欄参照)。 3.原子力・放射線と環境との関わりについては、これまでの我が国では、刑法的観点からはあまり議論されてこず、わずかに刑法改正との関係で言及されていたにすぎない。本研究では、原子力・放射線保護を環境刑法の中に規定するに至ったドイツの状況を参考にしつつ、我が国における法制度について考察している。結論として、現在のような行政法規のみによる規制(保護)には疑問があることを提示する。成果は公刊予定である。 4.今後も引き続き環境刑法の成立可能性について考察していくが、次の段階として、環境刑法としての役割を事実上果たしてきた公害関連法規の運用等についての総括をしておきたい。
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[Publications] 丸山雅夫: "水環境に対する刑法的保護" 上智法学論集. 37. 191-229 (1993)
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[Publications] 丸山雅夫: "原子力・放射線と刑法" 南山法学. 18,(発表予定). (1994)