1993 Fiscal Year Annual Research Report
地方議員の政治的・社会的イデオロギーの構造とその形成過程
Project/Area Number |
05620049
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
井上 義比古 東北学院大学, 法学部, 助教授 (90176454)
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Keywords | 地方議員 / イデオロギー / 政治文化 / 政治エリート / 政治的社会化 |
Research Abstract |
思想史研究において指摘されているここと同様に、県会議員の場合にも、自由主義イデオロギーの中心的概念である「自由」に対する理解が、保守系と革新系では異なる傾向にあるように思われる。即ち、保守系の場合には、どちらかというと経済活動の自由が、革新系の場合には表現の自由・人権が強調される傾向がある。しかも、保守系の場合には、儒教的倫理の残滓を含む保守主義的態度と、自由主義イデオロギーの受容とが結びついている。 但し、このことは、すべての革新系議員が輸入イデオロギーを本来の形で受容していることを意味せず、リクルートメントの経路(幼少の頃からの社会化、組織所属、問題対応等)・学歴・選挙基盤の相違により、スローガンと実際に保有している信念の一貫性には相違が見られる。保守系内部においても、役割認識として、個別的な利得媒介以外について触れない者と、保守的イデオロギーの観点(経済的自由主義を含む)に自覚的な者とがあり、これもまた、リクルートメントの経路・学歴・選挙基盤の相違に対応しているようである。また、保守系の場合、代議士系列による相違が見られ、上記の要因に加えて、地方議員集団の指導者である国会議員のイデオロギー自覚度や、地方議員集団の凝集性の相違(即ち、リクルートメント時点の前後からの社会化経験)が、地方議員のイデオロギー構造に影響を与えていることも示唆している。 以上のような知見が指摘できると思われるが、県会議員に対する面接が終了していないため、これまでの面接に基づいた限定的かつ暫定的なものに過ぎず、平成6年度に研究が終了した時点で、再検討を行ないたい。
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