1993 Fiscal Year Annual Research Report
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05630030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
溝端 佐登史 京都大学, 経済研究所, 助教授 (30239264)
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Keywords | システム転換System Transformation / 市場経済Market Economy / 民営化Privatization / ショック療法Shock Therapy / 持株会社Holding Company / 企業家精神Enterpreneurship / 官僚制Bureaucracy / 規制緩和Deregulation |
Research Abstract |
本年度はロシアを対象として、体制転換の経済政策の効用と民営化政策の実証研究を行なった。また、いずれの問題についても実証的な研究を深めるために、93年2-4月にロシアでの現地企業調査(官庁等を含む)および経済専門家との意見交流を行なった(94年3月にはドイツ、ベルリンでの現地企業調査を行なう予定である)。わが国では比較的マクロ的な視角からの研究が多いのに対して、ミクロ的な視角からの実証研究は、類似の調査が皆無なこともあり、独自性のある貴重なデータとなる。 経済政策の分析により、92年からロシアで(東欧ではそれ以前から)実施されているショック療法型の市場形成政策が事実上修正されており、産業政策が重視され、国家の管理能力(統制)の拡大の傾向が明かになった。このことは、旧社会主義体制の体制転換が長期的には市場経済化するとしても、中短期的には特殊な形で、ロシアの場合には伝統的な慣行を復活させながら、移行することを意味している。また、この政策の分析では、東欧諸国との比較研究を行ない、経済の自由化の結果、政策スタンスに生じている変化の共通性と相違性を明かにした。 さらに、平成4年に継続して、民営化の制度・経営主体の動向を理論的・実証的に検討した。民営化への経済支援がすでに提起されている以上、経済支援のひとつの対象として位置づけられる。所有改革は進んだが、形式的な所有権の移転にすぎず、経営者機能の改革がきわめて弱いことが明かになる。 いずれのテーマについても、専門の学会(ロシア・東欧学会や国際経済学会など)および講演会で報告し、また、図書あるいは論文の形式でそれらの公表を行なっている。また、93年の激しい変化に対応して、適時に新聞等への解説も発表した。
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[Publications] 溝端佐登史: "ロシアの体制転換-混迷の経済危機とその軟着陸の可能性-(上)(中)(下)" 税経新報. 385-387. 51-55,38-44,44-50 (1993)
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[Publications] 溝端佐登史: "ロシアはどうなる?-市場経済化と民営化による体制転換の模索-" 経済科学通信. 75. 79-84 (1994)
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[Publications] 溝端佐登史: "ロシアにおける市場経済化と経営者形成の現段階" ロシア・東欧学会年報. 23. (1994)
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[Publications] 大崎平八郎編: "『混迷のロシア経済最前線』" 新評論, 324 (1993)
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[Publications] 木原正雄・溝端佐登史・大西広共編: "『経済システムの転換-20世紀社会主義の実験』" 世界思想社, 273 (1993)
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[Publications] 溝端佐登史: "『市場体制化途上のロシア経済』" 龍谷大学社会科学研究年報別冊, 60 (1993)
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[Publications] 田中雄三・溝端佐登史・大西広共編: "『再生に転じるロシア』" 機関紙共同出版, 270 (1993)
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[Publications] 杉本昭七編: "『現代世界経済の転換と融合』" 同文舘, 371 (1993)
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[Publications] 田中雄三編: "『脱社会主義経済の現状』" リベルタ出版, 304 (1994)