1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05630030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
溝端 佐登史 京都大学, 経済研究所, 助教授 (30239264)
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Keywords | 体制転換 System Transformation / 官僚的調整 Bureaucratic Coordination / 民営化 Privatization / 失業 unemployment / 金融集団 Financial Group / リセッション recession / ロビ-活動 lobbying / 持株会社 Holding Company |
Research Abstract |
本年度は、民営化政策の実証分析のために、2度の現地調査を行った。ひとつは、94年3月のドイツ(旧東独地域)における調査で、信託公社や民営化企業を調査し、多くの研究者との交流を図った。もうひとつは、94年9-10月のロシアにおける調査で、資産管理委員会や雇用局などの主要官庁を訪ね、経済学者との討論、円卓会議を行った。いずれの調査でも、民営化の実施機関および企業を直接に訪ねて、民営化の効果を調査している。とくに、後者の調査では西側の経済援助がロシア(とりわけ地方都市)に及ぼす経済効果について科学アカデミー、研究者と交流を行い、タタールスタン共和国大統領、各地の科学アカデミー支部において日本の経済学者との知的交流の要請を受けた。 本年度の研究では、まず、民営化政策をロシア・東欧諸国において比較研究し、ロシアの民営化の独自性、ロシア市場の独自性を明らかにした。官僚的調整の作用範囲の大きさ、産業ロビ-の形成の現状、それに伴う国家の役割・経済政策の変化はその独自性を示している。ただし、体制転換リセッションにおける経済政策の目標転換においては、インフレ抑制から景気刺激への共通する傾向もまた明らかになる。 また、民営化に伴う企業行動の変化を研究するために、ロシアにおける労働市場を実証研究し、企業・労働者が市場に適合する動きと集団主義的に行動する動きを明らかにした。体制転換諸国における民営化が、すぐに失業者を排出しないメカニズムが検証されている。このような研究は、民営化が経営能力の形成に直結しておらず、西側経済援助や国際的な共同研究が経営者の形成、市場慣行への適応において効果が大きいことを示している。 いずれのテーマについても、専門の学会(比較経済体制学会、比較経営学会など)および講演会において報告し、また図書あるいは論文の形でそれらの成果の公表を行っている。
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[Publications] 溝端 佐登史: "「ロシアにおける市場経済化と経営者形成の現段階」" 『ロシア東欧学会年報』. 第22号. 1-14 (1994)
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[Publications] 溝端 佐登史: "「ソ連社会主義の崩壊と体制転換-体制転換に伴う新しい国家の形成」" 『世界経済評論』. 8月号. 16-18 (1994)
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[Publications] 溝端 佐登史: "「経済政策の変遷とロシアの再生可能性」" 『ユーラシア研究』(ユーラシア研究所). 第4号. 14-23 (1994)
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[Publications] 溝端 佐登史: "ロシアの労働市場と失業問題-市場経済化に伴う失業形成メカニズムについて" 京都大学経済研究所ディスカッションペーパー. KIER9402. 1-36 (1994)
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[Publications] 溝端 佐登史: "「ロシアの体制転換」" 『季刊 経済と社会』. 1号. 95-107 (1994)
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[Publications] 溝端 佐登史: "「旧東ドイツ地域の市場経済化・民営化の現状」" 社会科学研究年報 別冊シリーズ 竜谷大学社会科学研究所. 第5号. 1-100 (1994)
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[Publications] 小野 堅・岡本 武・溝端 共編: "『ロシア・東欧経済-体制転換期の構図』" 世界思想社, 280 (1994)
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[Publications] 田中 雄三編: "『脱社会主義経済の現状』" リベルタ出版, 302 (1994)