1993 Fiscal Year Annual Research Report
中国近代綿紡績業における技術移転と民族資本の成長-南通大生紗廠を中心として-
Project/Area Number |
05630040
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中井 英基 北海道大学, 文学部, 教授 (70068758)
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Keywords | 綿紡織業 / 技術移転 / 民族資本 / 外国資本 / 在華紡 / 大生紗廠 |
Research Abstract |
1.本研究は二ケ年計画で進める予定である。まず初年度における最初の研究は、大生紗廠の創業者である張謇(ちょうけん、1853年〜1916年)という人物について、比較史的見地から彼を中国近代企業家史上に位置づけを行う研究を試みた。すなわち、彼と同時代、また時代を前後する中国の代表的な企業家七人(そのうち綿紡績業関係の四人を含む)を選び、彼らと張謇を比較し、張謇の「郷紳型」に対する「商人型」、「買弁型」、「官僚型」、「専門経営者型」などの企業家の類型化を試みて、「近代中国の企業家精神」と題する論文を草した。(『ナショナリズムと国民国家の形成』、アジア政経学会40周年記念論文集所収、東京大学出版会、1994年3月刊行予定、現在印刷中) 2.その作業と並行して、近年進められてきた中国近代紡績業の諸研究を整理・検討しながら、中国で最近出版された大生紗廠の本廠・分廠計四工場の創業以来の各年営業成績報告書(1899年〜1923年)の分析に着手している。大生紗廠の歴史は、ひとまず次の各段階に分かれると思われる。すなわち、(1)設立準備期(1895年〜99年)、(2)創業期(1899年〜1903年)、(3)清末の発展期(1904年〜1911年)、(4)民国初の発展と衰退の時期(1912年〜1923年)、(5)三分工場の発展期(1904年〜1923年)の五期である。これら各時期における中国綿紡織業全体の動向、また直接関係の深い上海の民族資本・外国資本それぞれの綿紡績業の盛衰、そしてさらに中国市場へ積極的に綿糸・綿布を輸出していた日本・インドなど諸外国の状況とも関連させながら、個別資本(大生紗廠)の成長・発展・衰退の過程とそれぞれの原因の分析に取り掛かっている。
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