1994 Fiscal Year Annual Research Report
地価形成メカニズムと土地のオプション性に関する理論的-実証的分析
Project/Area Number |
05630057
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Research Institution | Yokohama National Univesity |
Principal Investigator |
加納 悟 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (50114971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村瀬 英彰 横浜国立大学, 経済学部, 助教授 (40239520)
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Keywords | 地価形成 / バブル / ファンダメンタルズ / オプション・プライシング / 用途転換 / ポラティリティ / 下方硬直性 |
Research Abstract |
本研究では、従来の地価モデルで看過されている土地のオプション性を理論化し、その理論に基づき現実の地価データを用いた実証分析を行った。その結果、地価水準、地価変動、土地利用について、現状を整合的に説明するモデルの構築という点に成果を挙げた。具体的な研究内容は以下の通りである。1.土地のオプション的性格を分析するために、複数の土地用途をモデルに組み入れ、土地の用途間選択を明示化した不確実性下の動学的地価形成モデルを構築した。2.モデルに基づき、各用途の収益性、用途間の収益性の差異、収益性に存在する不確実性、市場利子率の変化などが地価の水準、変動に与える影響を分析した。3.以上の分析により、(1)バブルが存在しない下でも地価がファンダメンタル価値を上回って上昇するメカニズム、(2)収益に存在する不確実性が地価変動のみならず地価水準に影響を与えるルート、(3)地価には上昇期と下降期とでその変動に非対称性が存在するメカニズムなど、従来のモデルにはない特徴を明らかにした。4.モデルの現実の地価変動への適合度をみるため、東京都区部住宅地のデータを用いて実証分析を行い、1988、1989年段階で、土地のオプション価値が土地のファンダメンタル価値と現実価格の差のうち約半分を占める要因となっているとの結果を示した。5.以上の結果を論文「地価形成:バブルとオプション」および“Land Price Bubbles and Option Property of Land"にまとめ、理論計量経済学会、統計研究会(金融部会)等で発表し、討論者から有益なコメントを得た。現在は、それらのコメントを基に改訂を行い、論文を投稿する予定である。改訂の主要な点は、土地のファンダメンタル価値を支配する確率過程をより一般的なものにしたこと、土地の用途転換のコストに固定費用を明示化し、モデルをさらに現実的なものとしたことである。
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