1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05640316
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
古在 由秀 国立天文台, 台長 (70012789)
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Keywords | 環 / 天王星 / 羊飼い衛星 / 強制離心率 / 近点の同期 |
Research Abstract |
昨年度までの解析力学的な手法で、観測された天王星の環の離心率は、外側の未知の羊飼い衛星の力学的作用による強制離心率であり、従ってその近点の動きは、衛星の近点の動きと同期しているのだという結果を得て、天王星の力学的構造を説明した。またこれと同じ仮定で、環の離心率の内側から外側にかけての増加率や、軌道面の交点の動きも説明出来た。一方この解析的な取扱いには、かなりの誤差が入りうるので、計算機を使っての数値積分を今年度は試みた。この研究では、東京工業大学理学部の井田茂氏の協力を得た。 数値積分は、偏平な回転楕円体である天王星と、その周りを動く衛星の作用を受けて運動する、環を代表する一つの粒子という力学系について試みた。この際、衛星は環の外側にあると仮定した。パラメーターとしては、天王星の偏平率、衛星と粒子の距離、衛星の離心率をとり、確かにある条件では、粒子の強制離心率が大きくなり、近点が衛星の近点と同期する場合のあることを知った。 この問題で、衛星と環との距離が非常に小さいと、衛星の環の粒子に対する影響は大きくなりすぎてカオスの状態となり、同期が起きることはない。また、その距離がある程度以上になると、衛星の影響での強制離心率の値は余り大きくはならず、同期現象は起こらない。従って、同期現象の起きる条件を満たすパラメーターの範囲はかなり限られた範囲に限定されるが、このような条件となる場合は確かにあることが分かったのは、大きな成果である。この衛星を二つ(内側と外側に一つづつ)とした際の計算にも着手しており、この場合にも基本的な性質の差はないと考えられる。また、環のなかの自己重力の影響についても確かめるつもりにしているが、まだこの問題には着手していない。
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