1994 Fiscal Year Annual Research Report
4次元正準量子重力理論における観測量の構造とダイナミクスの研究
Project/Area Number |
05640340
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小玉 英雄 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (40161947)
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Keywords | 相対性理論 / 正準理論 / 量子重力 / 完全拘束系 |
Research Abstract |
本年度は、当初、(2+1)次元および(3+1)次元における具体的な重力系の正準構造の研究を予定していたが、重力を含む完全拘束系の量子論の定式化の研究が大きく進展したので、主にそちらに精力をつぎこんだ。具体的な成果は以下の通りである。 1)私の提案している完全拘束系の量子論の新しい定式化では、拘束条件を課さない状態空間におけるacausal subspaceとしてどのようなものを取るかが重要となる。これまでの研究で、運動の定数に対応する有界作用素の作るフォンノイマン代数に着目し、その中心分解により決まる因子の作用により不変なacausal subspaceに限定して考えるのが物理的に自然であるという結論を得た。この定式化では、拘束系の量子論的ダイナミクスとフォンノイマン代数の構造との間に密接な関連があることになる。 2)1)の定式化のもとで、高々の加算個の互いに可換な拘束条件を持つ系を詳しく調べ、この場合には運動の定数の作るフォンノイマン代数はタイプIとなることを示し、すべての物理的なacausal subspaceを決定した。さらに、これらのacausal subspaceの間の因果的対応は常に共形的であり、ダイナミクスは広い意味でのユニタイリ性を持つことを示した。 3)2)の応用として、相対論的自由粒子および曲がった時空上のポテンシャル力を受けて運動する粒子に対応する拘束系の量子論的ダイナミクスを具体的に調べ、前者に対しては物理的なacausal subspaceを取り出すことにより自然に波動関数の正、負振動数モードへの分解が得られること、また、後者に対しては、原理的にはそのダイナミクスが通常の拘束条件を持たない量子力学系と同じ構造を持つことを示した。 以上の成果は、現在準備中の論文で発表する予定である。
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Research Products
(1 results)