1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05640368
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
後藤 武生 東北大学, 理学部, 教授 (10004342)
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Keywords | 色素 / 結晶 / フォトクロミズム |
Research Abstract |
フォトクロミック色素として水素移動形のサリチルデンアニリンを選び、その結晶を気相法により成長させた。得られた結晶は長さ10mmで幅1mm位の柱状形をなしている。X線回折により軸方向を決定した。この結晶に室温で365nmの紫外光を照射すると480mm付近に吸収帯が現れ、可視光を照射すると消失する。この現象は77Kでも観察されるが、可視光を照射しても可視部の吸収帯は完全にはなくならない。サリチルデンアニリン分子の場合との類似性から、室温ではtrans-ketoの分子となるが77Kではcis-ketoの状態のままとどまるものもでてくると考えられる。77Kでは水素の移動は起こるが、ベンゼン環の回転は熱的に起こり難いと考えられる。またb軸偏光による吸収変化の割合がc軸偏光よりも起こり易いことも分かった。 アレゴンレーザーの488nmの光を可視吸収帯のモニター光として、水銀ランプの365nmの光を照射光として用い、enol状態からtrans-keto状態への光構造変化にたいする活性化エネルギーを求めると17meVとなりその値はポリマー中のものよりも大きいがジベンジル結晶中に入っているサリチルデンアニリン分子のよりも小さいことが分かった。このことは結晶中でのenolの励起電子状態ではベンゼン環の回転が比較的起こり易いことを意味していると考えられる。逆に可視光を照射して可視部の吸収の減少を調べ、逆反応の割合から活性化エネルギーを求めると17meVとなり、この値もジベンジル結晶中の分子の場合よりかなり小さい。しかし熱的活性化エネルギーは約1eVとなりあまり変わりないことが分かった。従って励起電子状態が隣りの分子に移動するためフォトクロミズムは起こり易いがサーモクロミズムは起こり難いことが考えられる。
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