1994 Fiscal Year Annual Research Report
グラファイト状化合物BC_3とその類似物質の電子構造パラメータの第一原理的決定
Project/Area Number |
05640372
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中尾 憲司 筑波大学, 物質工学系, 教授 (30011597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 誠司 北海道大学, 工学部, 講師 (90222322)
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Keywords | グラファイト状化合物 / BC_3とBC_2N / 第一原理電子状態計算 / 電荷移動 / ボンド状態 / フラーレン族 |
Research Abstract |
前年度に、グラファイト中の炭素の一部をホウ素で置換したBC_3、及びホウ素と窒素で置換したBC_2の電子状態を、局所密度汎関数理論の枠内で第一原理セルフコンシステントなバンド計算により求めたが、既に公表されているカルフォルニア大学グループのBC_3の結果と比べて、フェルミ準位近くのバンドの性格に大きな違いが現れた。本年度再度計算を繰り返して検討したが、我々の局在原子軌道を基底にとる方法と、カルフォルニア大学グループの用いた非局在平面波を基底にとる方法との、計算方法の違いに帰着せざるを得ないとの結論に達した。カルフォルニア大学の結果は、π及びπ^*バンドがフェルミ準位より高いエネルギーをもつという直感的には理解しづらいものであり、我々の結果が妥当であると信じているが、未だ明確になっていない。このために、本年度実行の予定であったインターカレーション化合物への発展は終了しておらず、次年度への課題として残っている。 我々の他の重要な成果は、炭素とホウ素及び窒素間の電荷移動が本質的にこれらの元素の電気陰性度の差で定まることを確認した点である。BC_3とBC_2N中では、ホウ素はB^+に、窒素はN^-に近いイオン状態になっており、グラファイト状物質に特有なSP^2混成軌道ネットワークの形成とイオン性結晶の性格とが共存しているという、独特の結合状態をなしていることが見出された。BC_3とBC_2Nがグラファイトと大きく異なるボンド状態を有することは興味深いことで、将来の光電子分光やSTMの実験との比較を念頭において、電子分布や局所状態密度も計算した。これらの結果は次年度に公表予定である。 また研究課題と密接に関連するフラーレン族の電子状態とボンド状態の研究も平行して行った。今年度の公表成果の一部はこれらに関するものである。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] S.Mizuno,M.Fujita,K.Nakao: "Electronic states of graphitic heterocompounds of carbon,boron and nitroger" Synthetic Metals,Proc.Int.Conf.on Science and Technology of Synthetic Metals,Seoul,1994. (印刷中). (1995)
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[Publications] D.Inomata,K.Kurita,M.Fujita,S.Suzuki,K.Nakao: "Stability of boron and nitrogen substituted buckminsterfullerene" Trans.Mat.Res.Soc.Jpn.14B. 1231-1234 (1994)
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[Publications] K.Nakao,N.Kurita,M.Fujita: "Ab initio molecular-orbital calculation for C_<70> and seven isomers of C_<80>" Phys.Rev.B. 49. 11415-11420 (1994)
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[Publications] D.Inomata,N.Kurita,S.Suzuki,K.Nakao: "Force-constant model of a fullerene based on a first-principle method and the bond-population analysis:Applications to C_<60> and C_<70>" Phys.Rev.B. 51. 4533-4540 (1995)
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[Publications] S.Suzuki,D.Inomata.N.Sashide,K.Nakao: "Interaction between intramolecular vibrations and low-lying excited states of C_<60>" Fullerene Science & Technology. 2. 145-153 (1994)
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[Publications] R.A.Jishi,D.Inomata,K.Nakao,M.S.Dresselhaus,G.Dresselhaus: "Electronic and Lattice Properties of Carbon Nanotubes" J.Phys.Soc.Jpn.63. 2252-2260 (1994)