1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05640374
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 康民 東京大学, 物性研究所, 助教授 (00126103)
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Keywords | グラファイト / フラーレン / 超伝導 / バ-テックス補正 / GISC法 / 強磁場 / 電荷密度波(CDW) / スピン密度波(SDW) |
Research Abstract |
グラファイトやフラーレンは物理・化学両面から注目されている.本研究では,これら炭素物質の物性のうち,電子間の多体効果が本質的な役割を演じる,1.強磁場下グラファイトの電子相転移と2.フラーレンの超伝導という二つの現象の解明に取り組んだ.まず1に関して,層に垂直な強磁場下での電気抵抗の測定に現れる低温での異常は,従来,磁場方向の電荷密度波(CDW)の形成に起因するという説明がなされていた.しかし,その議論においてグラファイトのブリルアン帯の非等価な2つの稜H-K-HとH′-K′-H′の区別が適切でなかったので,昨年度はその区別を明確にして,CDWやスピン密度波(SDW)のハートレー・フォック近似でのギャップ方程式をたて,CDWよりもSDWの方が高い転移温度T_cを持つことを示した.今年度は電子間の相関効果,とりわけ遮蔽効果を中心に考慮した.まだ検討すべき点も多いが,CDWよりもSDW形成の可能性の方が高いという結論は変わらないと思われる.次に2の超伝導の研究は今年度の中心課題であった.アルカリ金属をドープしたフラーレンでは,伝導電子のバンド幅と同程度のエネルギーを持つC_<60>分子内フォノンと強く結合し,電子相関も比較的強い多電子系を扱う.従ってこの系での超伝導を論じるには,バ-テックス補正を考慮した強結合超伝導理論の開発が不可避である.昨年度,その第一歩としてGISC法と名付けた理論を開発し,フラーレンに適用した.しかし,GISC法は発見的処方で,その理論的根拠が薄弱であったので,今年度,それを与える基礎理論をBaym-Kadanoffの保存近似法を越える形で構成した.そして,バンド幅の小さい極限では,電子のフォノンによる閉じこめを意味する.ある特有のエネルギーでのバ-テックス関数の発散など,興味深い事実を見いだした.なお,この一般理論は電子・フォノン系だけでなく,強相関系院に適用でき,今後の発展が期待される.
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Y.Takada: "Consideration of the Mechanism of Sperconductivity in Fullerenes:Beyond Migdal's Theorem and Dynamic Coulomb Effect" J.Phys.Chem Solids. 54. 1779-1788 (1993)
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[Publications] K.Takahashi and Y.Takada: "Charge-and Spin-Density-Wave Instabilities in High Magnetic Fields Strong-Coupling Theory for Superconductivity with Vertex Corrections" Physica. B201. 384-386 (1994)
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[Publications] Y.Takada: Condensed Matter Theories,. 1. (1995)
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[Publications] Y.Takada: "Electron-Phonon Locking and Superconductivity" J.of Superconductivity. 8. (1995)
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[Publications] 高田康民: "フラーレンの超伝導" パリティ. 9. 14-21 (1994)