1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05640378
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水貝 俊治 大阪大学, 理学部, 助手 (50028263)
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Keywords | 光誘起原子移動 / スモール・ポーラロン / オフセンター・セルフトラップ・エキシトン / ラマン散乱 |
Research Abstract |
イオン結合性の強いII-VI族半導体では電子-格子相互作用が強いため、エネルギー・ギャップ以上の光の照射により電子励起に関係した構造不安定を引き起こすことがわかった。CdTeではエネルギー・ギャップ以上の光で励起したとき、低温では正常なラマン・スペクトルを示していたものが、250K以上になると全体のバックグラウンドが異常に大きくなり新しいピークが現れる。この時点ではピークは小さく幅が広いが、再び低温にすると新しいピークは鋭いピークになる。この新しいピークはテルル結晶のフォノンと同じエネルギーであるので、この現象は250K以上で起こる光誘起カルコゲン原子の析出現象であると考えられる。 この現象を説明するために最近アルカリハライドで見つかったオフセンター・セルフトラップ・エキシトンと同様なものがII-VI族半導体でも光照射により作られているというモデルを提案する。すなわち光照射でテルル位置に作られた正孔が隣の原子位置のテルルを引き込んで、一つの原子位置に二つのテルル原子が入り、アルカリハライドのHセンターに対応するスモール・ポーラロンができる。低温ではできた位置から動かないで再結合して消滅するが、250K以上ではフォノンの助けを借りて結晶中を移動してテルル・クラスターを作ると考える。 II-VI族半導体ではギャップ以上のフォトンで励起すると室温で本来ラマン不活性な波数ゼロ以外のフォノン・ラマン線がラマン活性なフォノン線より強くなったり、共鳴散乱時には9-10次までの多重フォノン散乱が観測される。これを電子状態の局在化とフォノンの強い非線型性のため通常は働かないフランク・コンドン・ラマン課程が働いているためであると考えると、II-VI族半導体の光誘起不安定性を上のスモール・ポーラロン・モデルで統一的に説明できると考えて確認のための実験を行っている。
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