一次相転移点近傍における2相共存状態の安定性と相境界の構造

1993 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 05640437
• Research Institution: Tokyo Institute of Technology
• Principal Investigator: 弘津 俊輔 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (40016069)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 山本 達之 東京工業大学, 生命理工学部, 助手 (60230570)
• Keywords: 高分子ゲル / 体積相転移 / 相境界 / パターン形成 / 相分離 / 2相共存領域

Research Abstract

本年度は特に、中性poly-N-isopropylacrylamide(NIPA)ゲルの2相共存領域における、相境界移動のカイネチックス、相分離過程での不均一構造の凍結、及び新たに見い出された異常な相分離パターンについての研究を行った。
1.相境界移動のカイネチックス:この点に関して特筆すべきは、実験技術の改善である。すなわち、従来の相境界移動の測定は、極めて長時間(数日〜数週間の程度)を要する事が難点であったが、我々は本研究において直径100μm以下の極めて細いゲルファイバーを作製する事に成功し、それを試料とする事により、測定時間を大幅に(2桁程度)短縮できた。この改善により、相境界の運動に関して多くの詳細なデータを得る事が可能となった。現在、この方法に基づく測定が進行中である。
2.不均一構造の凍結:ゲルの相分離の中間過程で、不均一構造が凍結する現象は、試料の巨視的サイズに依存する事が、初めて確認された。この事実は、ゲルの表面構造がバルクとは異なることを示唆するものであり、来年度の研究課題である。
3.相分離におけるセルパターンの観測:エタノールと水との混合溶媒中の相分離において、きわめて特徴的なセルパターンが初めて観測された。この事は、NIPA鎖がかなり剛直である事の証拠であると解釈された。

Research Products

• [Publications] S.Hirotsu: "Coexistence of phases and the nature of first-order phase transition in poly-N-isopropylacrylamide gels" Advances in Polymer Science(Springer,Berlin). 110. 1-26 (1993)
• [Publications] 弘津俊輔: "ゲルにおけるスピノーダル分解の停止と分域構造" 日本物理学会講演概要集(1993年秋の分科会). 650 (1993)
• [Publications] 古川英光: "ゲルの大振幅揺らぎと局所的平衡状態" 日本物理学会講演概要集(1993年秋の分科会). 649 (1993)
• [Publications] 岡嶋孝治: "ゲルの表面構造とパターン形成" 日本物理学会講演概要集(1993年秋の分科会). 651 (1993)
• [Publications] S.Hirotsu: "Static and time-dependent properties of polymer gels around the volume phase transition" Phase Transitions. (印刷中). (1994)