1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05640446
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小野 嘉之 東邦大学, 理学部, 教授 (30011761)
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Keywords | 荷電ソリトン / ポリアセチレン / 活性化エネルギー / 飽和速度 / ピン止めのはずれ / 振幅モード / 伝導性ポリマー / 熱拡散 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、準1次元電子格子系として記述される導電性ポリマー(主としてポリアセチレン)における非線形励起、ソリトンのダイナミクスを計算機シミュレーションによって調べた。今年度の成果は、以下の通りである。 1.規則正しく並んだ荷電ドーパントのクーロンポテンシャルにピン止めされた荷電ソリトンの活性化エネルギを、ドーパント濃度の関数として評価し、ソリトン幅の有限性のため、濃度の増加と共に活性化エネルギーが急激に減少することを示した。 2.サイト型短距離不純物ポテンシャルと、ボンド型不規則性のソリトンに対する影響を、ダイナミカルなシミュレーションによって調べ、前者はソリトン幅程度の有限の広がりをもつこと、後者は階段状の非局所有効ポテンシャルを与えることを示した。後者は、ポリアセチレンにおけるソリトンがトポロジカルなソリトンであることによる。 3.静止したソリトンと、そのまわりの線形格子振動モードの知見を利用して、ソリトンの熱拡散をシミュレーションによって調べた。温度は線形モードの初期分布を与えるときに導入した。予備的な結果として、ソリトンの速度の相関関数が時間間隔と共に指数関数的に減少すること、その減衰係数が温度の増加関数であることが示された。これは、今後のより詳しい解析の基礎となると考えられる。 4.光励起されたポリジアセチレンのように、伝導バンドの底に電子が1つだけ存在している系では、音響フォノンモードと電子の相互作用のために、音響ポーラロンが出来る。この音響ポーラロンのダイナミクスを、ポリアセチレンのソリトンに対するのと同じ方法で調べ、ほぼ音速に等しい飽和速度をもつこと、音響ポーラロンのまわりには、振幅モードに当たる局在モードが存在しないことなどを確かめた。
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[Publications] M.Kuwabara: "Electric Conduction due to Charged Solitors in Polyacetylene" J.Phys.Soc.Jpn.63. 1081-1089 (1994)
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[Publications] A.Terai: "Attractive Interactions of Spin Polarons in the Qvasi-One-Dimen-sioral Spin-Density-Wave Background" Mol.Cryst.Lig.Cryst.256. 897-902 (1994)
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[Publications] A.Terai: "Dynamics of Soliton and Polaron Pairs in BOW and SDW Background" Synth.Met.(to be published). (1995)
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[Publications] M.Kuwabara: "Activation Energy of a Charged Soliton Pinned by a Dopant" J.Phys.Soc.Jpn.64(to be published). (1995)