1993 Fiscal Year Annual Research Report
北西太平洋域における第四紀以降の深層循環変動の解明
Project/Area Number |
05640517
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
安田 尚登 高知大学, 理学部, 助教授 (90175646)
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Keywords | 深層水循環 / 底生有孔虫 / 北西太平洋 / 氷期 / 南極底層水 / 地球環境 / 西マリアナ海盆 / 西カロリン海盆 |
Research Abstract |
本年度の研究では,西マリアナ海盆(KH92‐12PC)と西カロリン海盆北部(KH92‐13PC)の2本のコアの底生有孔虫群集の解析を行った。その結果,以下のことが明らかとなった。 1.Nuttallides umbonifera変動が示すAABW循環変動 底生有孔虫群集は,酸素同位体比カーブと正の相関を持つグループと負の相関を持つグループといずれも示さないグループに区分された。KH92‐12PCにおいて,正の相関を持つ代表種は,南極底層水を代表するNuttallides umboniferaである。大西洋の結果もこれと同様に後氷期にこの種が優勢となり,現在の南極底層水が後氷期に発達する過程を示していた。この種の産出量が,酸素同位体比カーブとほとんど同様であることから,氷量と底層水の強さに強い相関があることが予想される。また,逆相関を示すものは,Pseudoparrella sp.である。これらのことから,温暖な時期には北大西洋深層水が活動し,それに伴って南極の底層水も強化され,西マリアナ海盆まで運ばれた。しかし氷期には,深層水循環が鈍化し,固有水化してしまったと考えられる。 2.西カロリン海盆北部3PCが示す平均的な太平洋深層水の循環変動を示している。 3.特にフィリピン海海底部の地形効果による深層水・底層水の循環変動の現れ方 2PC(2683m)は海盆のなかでは比較的浅いが,この位置まで底層水の影響がでるには,ある程度の流量が必要であるとともに,地形形状によるところが大きい。現在のフィリピン海の海底は,周囲を伊豆小笠原からマリアナの海嶺,ヤップ島からパラオ島まで2000‐2500の壁で中央太平洋から閉ざされている。また深海部には,唯一ヤップ・マリアナ・junctionから底層水が流入している。底生有孔虫の群集変化はこの流入量が氷期と間氷期で大きく変動することを示していた。この海盆は,底の方から重い水が流入し,海嶺に縁まで来ると,あふれでてしまうので,比較的深度が浅くても南極底層水の影響を受けることがわかった。
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Research Products
(1 results)