1993 Fiscal Year Annual Research Report
イオウ同位体による東北地方への越境酸性降下物の評価
Project/Area Number |
05640544
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
柳澤 文孝 山形大学, 理学部, 助手 (00239807)
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Keywords | イオウ同位体 / 酸性降下物 / 硫酸イオン / 酸性雨 / 東北地方 |
Research Abstract |
日本では冬期になると日本海に面した地域で非海塩性硫酸の降下量が増加することが知られている。日本で排出されるイオウ酸化物の量は排気ガス規制のため年々低下している。しかし、中国では経済活動の伸張と脱硫装置設置の立ち後れから多量のイオウ酸化物が排出され続けている。 本研究は、東北地方へ越境してくる大気汚染物質の影響を見績もることを目的としたものである。日本海に面した酒田、内陸盆地に位置する山形・米沢・新庄、太平洋側の大船渡に降雨採取地点を設けて1ヶ月毎に湿性降下物を採取して溶存成分とイオウ同位体比を測定した。また、平成5年度の科研費によって購入したハイボリュームエアサンプラーによって乾性降下物を採取して化学組成とイオウ同位体比を測定した。 酒田では冬期に硝酸・非海塩性硫酸・非海塩性カルシウム・アンモニアの、大船渡では冬期に非海塩性カルシウムの降下量が増加した。また、酒田の降雨に含まれる硫酸のイオウ同位体比は夏低冬高の季節変動がみられた。大船渡でも同様であった。このことは、冬期に非海塩性流酸が大陸からの季節風によってもたらされたことを示している。これに対して、内陸の山形・米沢・新庄では溶存成分の季節変化は認められなかった。また、降雨に含まれている硫酸のイオウ同位体比は一年を通じてほぼ一定の値を示した。このことは、内陸盆地へは外部から大気汚染物質が移流していないことを示している。 以上のことから、冬期に偏西風に乗って大陸の人為起源のイオウ酸化物が日本に飛来して酒田で降雨に取り込まれて地表に降下し、内陸盆地を飛び越えて、太平洋側の大船渡に影響を及ぼしていることが明かとなった。
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Research Products
(1 results)