1994 Fiscal Year Annual Research Report
光機能分子-コポリペプチド複合体系でのエネルギー移動および光誘起電子移動
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05640574
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
楠元 芳文 鹿児島大学, 教養部, 教授 (20094138)
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Keywords | クロロフィル / ベータカロテン / コポリペプチド / タンパク質複合体モデル / エネルギー移動 / 電子移動 / 二次構造 / 界面活性剤 |
Research Abstract |
光合成色素-タンパク質複合体のモデルを意図して構築した光機能分子-コポリペプチド複合体系の分光学的研究を行った。L-Lys、L-Glu残基のような非芳香族アミノ酸残基と、L-Tyr、L-Trp、L-Phe残基のような芳香族アミノ酸残基からなるコポリペプチドは、pH6.5前後の水溶液中でL-LysとL-Glu残基のみがほぼ完全に解離してそれぞれ正と負に帯電するため、水溶性となる。そこで、界面活性剤イオンとして陰イオン性のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)または陽イオン性のセチルトリメチルアンモニウム塩化物(CTAC)を導入すると、SDSとCTACはそれぞれ正と負に帯電したコポリペプチドに協同的に結合し、コポリペプチド-界面活性剤複合体を形成する。その結果、今回用いた一連のコポリペプチドは不規則構造(ランダムコイル型)から規則構造(α-ヘリックス、β-構造)への二次構造の変化を示すことが円二色性スペクトルの測定より明らかになった。代表的な光機能分子であるクロロフィルa(Chl)とβ-カロテンは規則構造を有する複合体に取り込まれると共に、β-カロテンからChlへのエネルギー移動が起こることがわかった。また、芳香族アミノ酸残基からChlへのエネルギー移動および電子移動が起こることも確認された。エネルギー移動と電子移動の機構をそれぞれForster理論とMarcus理論に基づいて考察した。さらに、水素結合性の側鎖をもつL-TyrとL-Trp残基はChlの9位の炭素のケトカルボニル基と(水素結合を介して)相互作用するが、非水素結合性のL-Phe残基はほとんど相互作用しないことが強く示唆された。以上のことから、本システムは光合成反応中心や光捕集システムにおける光合成色素-タンパク質複合体の有効なモデル系として機能することがわかった。今後は結合順序の明確なコポリペプチドを用いた研究が必要となる。また、本システムを二分子膜などのような生体類似膜に組み込むことも重要な課題の一つである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Velu Senthilathipan: "Temperature Effect on Association Between Chlorophylla and N-(3-Pyridyl)myristamide Adsorbed to Polyethylene-Tetradecane Particles" Chemistry Express. 8. 673-676 (1993)
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[Publications] Yoshihumi Kusumoto: "Association of Chlorophyll with Amides on Plasticized Polyethylene Particles.Effect of Temperature on Fluorescence" Science Reports of Kagoshima University. 43. 9-24 (1994)