1994 Fiscal Year Annual Research Report
1,8,9-トリス(セレノ)アントラセン類の合成とその特異な化学的性質の究明
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05640608
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
中西 和郎 和歌山大学, 教育学部, 助教授 (80110807)
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Keywords | セレニドのハロゲン付加体 / セレン原子間の分子内相互作用 / 分子錯体 / TB付加体 / 3c-4e結合 / 分子錯体の結合特性 |
Research Abstract |
研究実績の概要を次の5点にまとめた。 1.1,8,9-トリス(フェニルセレノ)アントラセン(1)を合成するため、その前駆体となる1,8-ビス(フェニルセレノ)アントラセン(2)を文献記載の方法を参照、改良して、1,8-ビス(フェニルセレノ)アントラキノンから中程度の収率で合成する方法を確立した。2をLDAと反応させたが、9-位の水素が引き抜かれた様子はなかった。また低温でn-BuLiと反応させたところ、n-BuLiがセレンを攻撃したと思われる生成物が得られた。現在種々の有機金属との反応を試みており、近日中に1が合成できるものと期待される。 2.1のモデル化合物としてナフタレン誘導体1-(MeSe)-8-(p-YC_6H_4Se)C_<10>H_6(3:Y=OMe,Me,H,Cl,Br,COOEt,NO_2)を合成し、そのNMRスペクトルを測定した。その結果、3においては、MeSe基の^<77>Se化学シフトはp-YC_6H_4Se基の^<77>Se化学シフトと良い正の相関正があり、^4J(Se,Se)の値は、p-YC_6H_4Se基の^<77>Se化学シフトとは、負の良い相関性があることが見い出された。 3.2.と同様に、1-[8-(p-YC_6H_4Se)C_<10>H_6Se]_2(4:Y=OMe,Me,H,Cl,Br,COOEt,NO_2)を合成し、そのNMRスペクトルを測定した。その結果、4の場合は、Se-Se基の^<77>Se化学シフトおよび^4J(Se,Se)の値はともに、p-YC_6H_4Se基の^<77>Se化学シフトとは、負の相関関係にあることが判明した。4のSe-Se基の場合は、3のMeSe基の^<77>Se化学シフトとは逆の置換基効果を示しすという興味深い結果である。この場合、4と関連して、非対称のジセレニドの測定に興味が持たれる。 4.分子錯体H_2SCl_2(MC)におけるSe-Cl-Cl結合を非経験的および半経験的MO法を用いて詳しく検討し、この結合が3c-4eで良く表現できることを論証した。 5.合成したセレン化合物のCVによる酸化還元電位を測定中であり、有機セレン化合物が系統的に合成されるに伴って、統一的な説明がなされるものと期待される。
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