1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05640638
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Research Institution | Daido Institute of Technology |
Principal Investigator |
山寺 秀雄 大同工業大学, 工学部, 教授 (70022499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 孝義 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (80249953)
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Keywords | 二核錯体 / 酸素架橋錯体 / 結合角 / 角重なり模型 / 七酸化二塩素 / ピロ硫酸イオン / 二クロム酸イオン |
Research Abstract |
1.二クロム酸イオン型二核錯体架橋部の電子的構造と結合角との関係について,混成軌道・非局在化分子軌道・局在化分子軌道を用い,角重なり模型の考え方に従って考察を行った。計算の結果は,核原子シグマ軌道と架橋酸素p軌道とのエネルギー差が大きくなるに従って結合角が大きくなるという傾向を示した。この傾向は,架橋酸素の結合角が七酸化二塩素,ピロ硫酸イオン,二クロム酸イオンの順に大きくなるという実験的知見と一致する。 2.核原子のシグマ軌道と架橋酸素の軌道との間の相互作用のエネルギーと軌道間のエネルギー差とを一定に保ち,結合角を変えて摂動法により結合エネルギーを計算すると,ある結合角において結合エネルギーが最大になる。混成軌道および局在化分子軌道を用いたときには,結合エネルギーは明瞭なピークを示すが,非局在化分子軌道の場合には結合角による結合エネルギーの変化は小さい。しかし,最大の結合エネルギーを示す結合角が,両原子の軌道間のエネルギー差,すなわち両原子の電気陰性度の差,が増すに従って大きくなるという傾向においては一致した。この傾向は軌道間相互作用のエネルギーの大きさが変わってもほとんど変わらなかった。一方,最大の結合エネルギーを示す結合角に関しては,どの場合にも計算は実験値よりもいくらか小さい値を示した。 3.上記のように,基本的な一つの型の二核錯体について3種類の方法で考察を行ったので,当初計画した他の型の錯体(N架橋,C架橋錯体)の考察に入ることはできなかった。しかし上に得られた結果は,他の型の錯体の考察にも利用し得る普遍的な知見である。 4.研究分担者鈴木は二クロム酸イオンを含む新しい錯体を合成し,その構造を決定した。
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