1993 Fiscal Year Annual Research Report
新しいニトロキシドラジカルアニオン生成法を用いる有機磁性体の合成と物性
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05640656
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
田村 類 愛媛大学, 教養部, 助教授 (60207256)
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Keywords | ニトロキシドラジカル / ラジカルアニオン / 自然分晶 / ラセミ混合物 / ホモアリルニトロ化合物 / ヨウ化サマリウム / 光学活性ラジカル / らせん結晶構造 |
Research Abstract |
新しい概念、方法論に基づく安定ラジカルの合成法の開発やスピン分極の大きな新種の安定ラジカルの合成が、新規有機磁性体構築のための必要条件となるとの観点から、新規なニトロキシドラジカルアニオン生成法を用いた、新種のニトロキシドラジカルやニトロキシド型電荷移動錯体の合成、およびそれらの分子構造、結晶構造と磁気物性との関連性について検討した。 1.ある種のエノン型ホモアリルニトロ化合物を合成し、3当量のSmI_2で還元すると、安定なニトロキシドラジカルアニオン種が生成することを見いだした。次いでこれのアニオン部を求電子試剤と反応させることにより、窒素のα位に4級不斉炭素を有する安定な五員環ニトロキシドラジカルを良好な収率で単離することができた。このうちのあるものは、その粉末と単結晶の融点、旋光度およびX線回折図を比較することにより、ラセミ混合物であることが判明した。事実、再結晶により自然分晶を起こし、光学活性体結晶が得られた。これは、ラセミ体のフリーラジカルがラセミ混合物として存在し、それが自然分晶を起こした最初の例である。そのX線構造解析の結果、3回らせん軸を有するらせん結晶構造(P3_1 or P3_2,Z=3)をとることが判明した。Faraday法による粉末の高温部での常磁性磁化率の測定(55K<T)により、ラジカル濃度をほぼ100%と決定した。また、磁化曲線より、1.8Kまでの温度範囲では分子間スピン相互作用は見られなかった。 2.電荷移動錯体合成のための基質であるキノン型ホモアリルニトロ化合物の合成に成功し、それが芳香族アミノ系やメタロセン系などの電子供与性化合物と電荷移動錯体を形成することを見いだした。今後は、錯体の単離、磁性と結晶構造について検討していく。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] R.Tamura,S.Susuki,N.Azuma,A.Matsumoto,F.Toda,et al.: "Preparation and Spontaneous Optical Resolution of Nitroxide conglomerate Assuming Spiral Crystal Structure" Angewandte Chemie International Edition English. 33 (印刷中). (1994)
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[Publications] R.Tamura,Y.Nagata,H.Shimizu,A.Matsumoto,et al.: "Novel Tellurium-Containing p-Terphenoquinone Analogues:preparation and Unique Redox Properties of Paramagnetic Tellurium-Centered Radical Cation Complexes" Advanced Materials. 5. 719-721 (1993)
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[Publications] R.Tamura,M.Kohno,S.Utsunomiya,K.Yamawaki,et al.: "Synthesis of PGB_1 Analogues by Radical Chain Substitution Reaction" The Journal of Organic Chemistry. 58. 3953-3959 (1993)