1993 Fiscal Year Annual Research Report
水和電子-希土類イオン間の電子移動過程の動力学的研究
Project/Area Number |
05640665
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
飛田 成史 群馬大学, 工学部, 助教授 (30164007)
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Keywords | 水和電子 / 希土類イオン / 電子移動 / レーザー光分解 |
Research Abstract |
本研究は、希土類金属イオンによる水和電子の捕捉過程を電子移動の一種と位置づけ、その速度と電子移動の自由エネルギー変化との関係、電子移動相互作用の大きさを調べ、通常のドナー、アクセプター間の電子移動との違いを明らかにすることを目的とした。 水溶液中でアニリンをNd:YAGレーザーの266nm光によって光イオン化し、生じた水和電子の希土類金属イオン(Ln^<3+>)による捕捉過程をレーザー光分解法によって検討した。720nmでモニターした水和電子の吸収の減衰速度から水和電子と希土類金属イオンの反応速度を求めたところ、還元電位が2.0V以下のEu^<3+>,Yb^<3+>,Sm^<3+>では、ほぼ拡散律速に近い速度定数(k=2.9-3.8x10^<10>M^<-1>s^<-1>)で水和電子が捕捉され、還元電位が2.7V付近すなわち電子移動のDELTAGがOV付近のイオン(Dy^<3+>,Nd^<3+>,Pr^<3+>)では、DELTAGの値がほぼ等しいにもかかわらず速度定数の値は、k=10^7-10^9M^<-1>s^<-1>の範囲で異なることが判明した。またE_<red>が2.7V以上のイオン(Tb^<3+>,Gd^<3+>等)では、反応速度定数はk=10^8M^<-1>s^<-1>以下であった。電子移動の自由エネルギー変化DELTAGとlog kの関係が、これまで報告されている電子移動の一般式にほぼ従うことおよび、Eu^<3+>について測定した反応速度に対するイオン強度依存性が小さかったことから、希土類イオンによる水和電子の捕捉過程は外圏型の電子移動の一種とみなすことができることが判明した。また、一般に希土類イオンの酸化還元過程に関与する4f軌道は、外殻の5s,5p電子によって外界から遮蔽されているため、他の分子との相互作用は弱いと考えられてきたが、水溶液中での水和電子との相互作用は透過係数がほぼ1となる強い相互作用であることが判明した。
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