1993 Fiscal Year Annual Research Report
メスバウアー分光法による樹皮試料中の鉄の状態分析を用いた都市域の大気環境分析
Project/Area Number |
05640676
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 基之 東京大学, 教養学部, 助教授 (10167645)
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Keywords | メスバウアー分光法 / 鉄の状態分析 / スズカケノキ / 樹皮 / 大気浮遊粉塵 / 自動車交通 / ヘマタイト / 大気環境分析 |
Research Abstract |
東京都内およびその近郊の主要道路沿いに街路樹として植えられているスズカケノキの外樹皮を薄くはがして採取し、^<57>Feメスバウアースペクトルを測定することにより、樹皮に付着した大気浮遊粉塵中の鉄の状態分析を行なった。都市域の大気浮遊粉塵中には、土壌に由来する天然記源の鉄の他に、人間起源の鉄が含まれていると考えられるが、本年度は、種々の人間活動のうち、特に自動車交通に着目し、大気浮遊粉塵中に含まれる鉄の化学状態が交通量とともにどのように変化するかを検討した。 採取した各地のスズカケノキ樹皮のメスバウアースペストルを解析した結果、樹皮試料を2つのグループに分けることができた。すなわち、a)2組のダブレット及び1組のセクステットから成る試料と、b)2組のダブレット及び3組のセクステットから成る試料である。すべての試料に見られた2組のダブレットは、メスバウアーパラメーターの値より、常磁性Fe^<3+>及び常磁性Fe^<2+>と同定され、これらはいずれも土壌起源であると判定された。また、セクステットのうち、すべての試料に共通に見られた1組は、ヘマタイト(α-Fe_2O_3)あるいはその水和酸化物と同定された。この成分の相対量を12時間当りの自動車交通量に対してプロットすると、自動車交通量の多いところで採取した樹皮ほど値が増大する傾向が見られた。このことは、スズカケノキ樹脂中のヘマタイト含量をメスバウアー分光法で求めれば、自動車交通由来の粉塵に起因する大気汚染状況を推定できるという可能性を示すものである。また、bグループのみに見られた2組のセクステットは、マグネタイト(Fe_3O_4)と同定されたが、京浜工業地帯から5km以内で採取された樹皮がこのグループに属することから、マグネタイトは工場などの固定発生源から排出されたものと推定された。
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