1995 Fiscal Year Annual Research Report
翅に2型を持つモンキチョウの雌の繁殖成功度に関する社会生物学的研究
Project/Area Number |
05640710
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
渡邉 守 三重大学, 教育学部, 教授 (80167171)
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Keywords | モンキチョウ / 交尾時間 / 邪魔 / 翅2型 / 乗っ取り / 精包 |
Research Abstract |
モンキチョウの雌に生じる翅の色彩2型の適応的意義を明らかにするため、本年度は、交尾中断実験と、野外の雄の求愛行動の補完調査を行なった。 一般に、探雌飛翔中のモンキチョウの雄は、しばしば、交尾中のペアに興味を示し、その回りを飛翔したり、ペアの隣やペアの翅に着陸したりと、あたかも交尾を邪魔するかのような行動を示す。このような「邪魔」の入らない室内では、羽化後1日齢のモンキチョウの雌雄の交尾は約45分で終了した。しかし、長野県北安曇群白馬村で、頻繁に「邪魔」が入った場合の交尾時間を計測したところ、処女雌に対する交尾時間は4時間を超える場合すら生じた。本実験に用いた雌は、すべて、交尾終了(または中断)後、直ちに腹部をピンセットで切り取ってアルコールで固定し、実験室に持ち帰って解剖し、交尾嚢を摘出、精包の体積を測定している。野外の雄との交尾を、途中で中断し、雌の交尾嚢内を調べたところ、精包の注入は交尾開始後1時間以内に終了していることがわかった。交尾時間の長さと注入された精包の大きさに相関関係はなかった。ただし、交尾相手の雄が老齢であった場合、注入された精包は小さかった。野外において、交尾の「邪魔」をする探雌飛翔中の雄は、交尾相手が老齢の雄であった場合に激しく「邪魔」を行なった。白色翅型雌との交尾態の方が黄色翅型雌とのそれよりも「邪魔」は激しかった。この時、「邪魔」された老齢雄はとまる位置を変える程度で、なんら積極的な反応は示さなかった。交尾している雌は「邪魔」する雄を無視した。「邪魔」する雄による雌の乗っ取りが観察された。また、老齢雄との交尾終了後、直ちに「邪魔」する雄との再交尾を行なった雌も観察できた。野外で捕獲した既交尾雌の約15%が再交尾に応じた。ただし、処女雌とは異なり、雄による長い求愛期間が必要であった。再交尾に応じた雌の交尾嚢内の雄注入物質は、再交尾を拒否した雌のそれよりも少なかった。これらの結果より、翅の色彩と対応した雄の求愛行動の影響について考察した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 渡邉 守・中西康之: "Population structure and dispersals of the sulfur butterfly Colias erate(Lepidoptera: Pieridae) in an isolated plain located in a cool temperate zone of Japan." Jpn. J. Ent.64(印刷中). (1996)
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[Publications] 渡辺 守: "蝶類と吸蜜植物「現代生態学とその周辺」" 東海大学出版会, 379 (1995)
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[Publications] 渡辺 守: "蝶類の多回交尾「日本動物大百科」" 平凡社(印刷中), (1996)