1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05640718
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
桑村 哲生 中京大学, 教養部, 教授 (00139974)
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Keywords | 双方向性転換 / 雌雄同体 / 性配分 / 繁殖戦略 / 魚類 / 社会システム |
Research Abstract |
ダルマハゼおよび、同様に一夫一妻で双方向性転換を行なうことが明らかになったコバンハゼ類について、これまでの実験・観察データをさらに詳しく検討し、これらにおける双方向性転換の進化要因を分析した。その結果、ペア形成後、繁殖開始までに雌のほうがよく成長すること(成長の性差)が、雌から雄への性転換の主要因であり、さらに宿主であるサンゴの死亡や配偶者の消失の後、サンゴ間を移動して新たな配偶者を探すこと(グループ間移動)が、雄同士の出会う機会を提供し、雄から雌への性転換も進化することが明らかになった。また、他の動物および植物において、これまで知られている双方向性転換の例を再検討した結果、その進化条件は3つに整理できることが明らかになった。そのうちダルマハゼ類の場合を含む2つの条件は、雌雄同体性魚類の多くに当てはまる可能性があることが示唆された。 水槽内同性同居実験については、一夫一妻・雄性先熟のクマノミと一夫多妻・雌性先熟のミスジリュウキュウスズメダイとカザリキュウセンについて実施したが、現在までのところ逆方向の性転換は確認されていない。なお予定していた種類のうち、ウミタケハゼは飼育困難であったため、またホンソメワケベラは個体数が激減していたため、実験を中止した。 上記魚種についての野外観察も行ったが、マーク個体の追跡の結果、ミスジリュウキュウスズメダイにおいて雌から雄への逆方向の性転換が初めて確認できた。ダルマハゼの性転換理論から予測されたとおり、異なるグループへ移動することに伴って起こったものであった。今年度の水槽実験においては、飼育条件が良好ではなかった可能性もあるので、来年度は野外における操作実験を主体にしたいと考えている。
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