1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05640723
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
増田 宏志 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (00003111)
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Keywords | 不定胚形成 / ニンジン胚軸 / コルチチン |
Research Abstract |
従来の植物の体細胞不定胚形成系は組織を植物ホルモンで脱分化させ、次いで脱分化細胞をホルモンのない条件下で培養するというものであった。我々が新しく開発した不定胚形成系はニンジン胚軸切片を2,4-Dで短時間(24時間)処理し、次いで2,4-D非存在下で培養すると細胞分裂が起こり細胞塊を形成し、次いで連続的に不定胚が形成される系である。この不定胚形成系は胚軸細胞がカルス形成を経ないで、直接不定胚が形成された。一方、この系で培養中に胚軸切片から多量の単細胞が離脱する。この単細胞の一部が分裂し細胞塊を形成し、次いで不定胚が誘導された。これも2,4-Dが存在しない条件下で起こる。それに反して、ニンジン胚軸切片を2,4-D存在下で継続的に培養すると、新しい系と比べ単細胞の離脱は少ないし、殆ど離脱しない場合もあり、更に不定胚は殆ど形成されない。この培養を2,4-D継続培養系とする。新しい不定胚形成系を2,4-D継続培養系の比較を生化学的レベルで検討した。DNA複製、RNA生合成は新しい不定胚形成でより活発であった。タンパク質生合成はほぼ同じレベルであったが、9日間培養した胚軸切片からmRNAを調製し、それを用いたin vitro translation実験で得たタンパク質の分析の結果、新しい不定胚形成系にのみ出現するタンパク質が存在した。一方、培地に分泌されるタンパク質では新しい系でより活発に生合成され、2,4-D継続培養系にはないタンパク質が多数出現した。更に、不定胚誘導に及ぼす物質の影響を調べた。ConAは不定胚から幼植物の再生を阻害し、不定胚表層から二次的な不定胚が多数出現した。細胞塊をcolchicine存在下で培養すると、細胞塊表層の細胞が部分的に膨らみ不定胚は形成されない。しかし、colchicineで3〜5日間処理した細胞塊をcolchicineの含まない培地に移して培養すると大きく膨らんだ一個の細胞が分裂し、やがて不定胚が形成された。この不定胚形成は2,4-D非存在下で起こり、受精卵の分割の様式を示した。
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