1993 Fiscal Year Annual Research Report
熱ショックタンパク質によるラン藻の環境応答の分子機構
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05640739
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
林 秀則 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助教授 (60124682)
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Keywords | 熱ショックタンパク質 / 環境応答 / ラン藻 / 遺伝子破壊 / 遺伝子クローニング / シャペロニン |
Research Abstract |
1.ラン藻の光合成の高温耐性 ラン藻Synechococcus PCC7002の光合成の高温耐性を解析し、以下の知見を得た。 (1).高温で生育したラン藻は酸素発生系の高温耐性を獲得し、獲得された高温耐性は、単離されたチライコイド膜においても保持されている。 (2).高温耐性を獲得したチライコイド膜を界面活性剤処理すると高温耐性が消失する。また遊離した成分をチライコイド膜に加えることによって高温耐性が回復する。 (3).チラコイド膜から遊離した成分のなかで、高温耐性に重要な役割を果たしている因子の一つとして、チトクロームを同定し、その遺伝子のクローニングを行った。 2.熱ショックタンパク質の遺伝子の単離 ラン藻Synechococcus PCC7002から2種類のgroEL遺伝子(groEL‐alpha、groEL‐beta)を単離し、その塩基配列、転写レベル、プロモーター領域の解析を行った。これまで異なった研究グループによってラン藻Synechocystis PCC6803から異なったgroEL遺伝子が報告されていたが、今回の結果によって一種類のラン藻に2種類のgroEL遺伝子が存在することが明確に示された。いずれのgroEL遺伝子のmRNAも、熱ショック処理によってそのレベルが上昇した。groEL‐alphaは分子量約10000の熱ショックタンパク質をコードするgroES遺伝子とオペロンを形成していたが、groEL‐betaにはgroES遺伝子が付随していなかった。一方、groEL‐betaの塩基配列から予測されるアミノ酸配列のC末端側には大腸菌のGroELと同様なGly‐Gly‐Metの繰り返しがみられた。 3.熱ショックタンパク質の欠損株の作製 Synechococcus PCC7002のgroEL‐beta遺伝子にカナマイシン耐性遺伝子のカートリッジを挿入した遺伝子断片を作製し、相同組換えによってこの遺伝子断片でSynechococcus PCC7002の形質転換を行った。PCRによってSynechococcus PCC7002のゲノムDNA上のgroEL‐beta遺伝子にカナマイシン耐性遺伝子のカートリッジが挿入されたことを確認した。現在、このgroEL‐beta遺伝子がノックアウトされた形質転換体の高温における生育を解析し、2種類のgroEL遺伝子が存在する意義の解明を進めている。
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[Publications] Y.Nishiyama: "The photosynthetic adaptation to high temperature is associataed with thylakoid membranes from Synechococcus PCC7002" Plant Cell Physiol.34. 337-343 (1993)
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[Publications] M.Mamedov: "Effects of glcinebetaine and unsaturation of membrane lpids on heat stability of photosynthetic electron‐transport and phosphorylation reactions in Synechocystis PCC6803" Biochim.Biophys.Acta. 1142. 1-5 (1993)