1994 Fiscal Year Annual Research Report
熱ショックタンパク質によるラン藻の環境応答の分子機構
Project/Area Number |
05640739
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Research Institution | Okazaki National Research Institute |
Principal Investigator |
林 秀則 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助教授 (60124682)
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Keywords | 熱ショックタンパク質 / 環境応答 / ラン藻 / 遺伝子破壊 / 遺伝子クローニング / シャペロニン |
Research Abstract |
ラン藻を致死温度に近い高温で短時間処理すると、その後一定期間は致死温度を越えた高温で生育できるようになる。また至適温度よりやや高い温度で一定期間生育させると、光合成の酸素発生の高温耐性が増大する。このようなラン藻の高温適応における熱ショックタンパク質の役割を解明するために、groEL遺伝子が破壊された形質転換体を作製し、その高温耐性の解明を試みた。 平成5年度の研究においてラン藻Synechococcus PCC7002から単離された2種類のgroEL遺伝子(groEL-αとgroEL-β)のうちgroEL-β遺伝子にカナマイシン耐性遺伝子のカートリッジを挿入した遺伝子断片を作製し、相同組換えによってこの遺伝子断片でSynechococcus PCC7002の形質転換を行った。PCRによってSynechococcus PCC7002のゲノムDNA上のgroEL-β遺伝子にカナマイシン耐性遺伝子のカートリッジが挿入されたことを確認した。 このgroEL-β遺伝子がノックアウトされた形質転換体の高温における生育を解析し、以下の知見を得た。 1.野生株およびgroEL-βを破壊した形質転換体のいずれにおいても、熱ショック処理後、致死温度である48℃での生存率が増大する。しかし形質転換体では野生株を熱ショック処理した場合より生存率が低い。従ってラン藻Synechococcus PCC7002はgroEL-αのみでも熱ショック応答の能力を保持しているが、groEL-βはこれに付加的に作用して、その能力をさらに強めるものと判断できる。 2.44℃で生育させた場合の酸素発生の高温耐性は野性株とgroEL-βを欠損する形質転換体において差は認められない。また熱ショック処理しても酸素発生の高温耐性は変化しない。したがって、ラン藻Synechococcus PCC7002の熱ショックタンパク質、少なくともgroEL(チャペロニン60)は酸素発生の高温耐性には関与していないと考えられる。
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