1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05640743
|
Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
本村 泰三 北海道大学, 理学部 (30183974)
|
Keywords | 細胞周期制御因子 / cdc2 / 多核緑藻 / ハネモ / PCR / 分子生物学 / マガタマモ / モツレグサ |
Research Abstract |
多核緑藻の核分裂にはいくつかのパターンが観察できる。例えば、ハネモなどでは個々の核の細胞周期は独立したものであり、そのため核分裂は非同調的に行われる。マガタマモではある領域の核集団で細胞周期は同調的に進行し、その領域内では核分裂は同調的に行われる。モツレグサでは細胞内の多数の核はすべてほぼ同調的に核分裂が行われる。真核細胞の細胞周期制御がP34^<cdc2>とサイクリンによって行われることが近年明らかになりつつある。そこで多核緑藻に見られる細胞周期の同調・非同調の現象をこれらの具体的な細胞周期制御因子の観点から考察を試みようと考え、今年度はモツレグサを材料にそのcdc2遺伝子について分子生物学的手法を用いて明らかにした。 PCRクローニングによってcdc2遺伝子の524塩基の配列を決定し、そこから推定される178アミノ酸配列を決定した。得られたアミノ酸配列をすでに報告のある分裂酵母のP34^<cdc2>と比較したところ、47.2%のホモロジーを示した。次にcdc2遺伝子産物を特異的に認識する"PSTAIRE抗体"を用いて活発に生長しているモツレグサから得られたタンパク質に対してイムノブロットを試みたところ、分子量3800のタンパク質が特異的に認識できた。なお、ハネモ・マガタマモにおいては"PSTAIRE抗体"を用いてのイムノブロットでは検出できなかった。今年度得られたこれらの結果は多核緑藻細胞における細胞周期の制御が、酵母・動物・陸上植物において報告されてきた制御タンパクシツと分子量・アミノ酸配列において大きく異なるタンパク質によって制御されている可能性を示すもので、海洋において多核生物として独特の進化を経てきたこれら藻類の形態形成機構を考える上でも興味深いものである。
|
-
[Publications] Motomura,T.: "Electron and immunofluorescence microscopy on the fertilization of Fucus distichus(Fucales,Phaeophyceae)." Protoplasma. 178. 97-110 (1994)
-
[Publications] Motomura,T.: "Premature chromosome condesnsation of the karyogamy-blocked sperm pronucleus in the fertilization of Fucus distichus(Fucales,Phaeophyceae)." Journal of Phycology. 31. 108-113 (1995)
-
[Publications] 本村泰三: "ミツイシコンブ配偶体の成熟要因、並びに生殖細胞の微細構造" 噴火湾研究. 3. 29-32 (1994)
-
[Publications] 本村泰三: "藻類の生活史集成 第2巻 褐藻・紅藻類" 堀輝三 編 内田老鶴圃, 345 (1993)