1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05640780
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Research Institution | Shinshu university |
Principal Investigator |
菅原 敬 信州大学, 教養部, 助教授 (10226425)
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Keywords | ヒメカンアオイ / キソジノカンアオイ / カンアオイ属 / 分類学 / 地理的変異 / 集団解析 |
Research Abstract |
本年度は,中国地方西部,近畿地方,中部地方南部から中部にかけての地域でヒメカンアオイ(広義)の集団サンプリングを行ない,花の各付属器官の質的及び量的形質の地理的変異の解析や染色体数の解析を進めてきた。その結果これまでに次のようなことが明らかになってきた。 1.木曽川流域に分布するカンアオイはキソジノカンアオイと呼ばれてヒメカンアオイの種内分類群として扱われてきたが,花の形態や葉形からは近畿地方中部から中部・北陸地方にかけて分布する一群(これが狭義のヒメカンアオイに相当すると考えられる)の変異のなかに含められ,種内分類群としても認めがたい。 2.天竜川中流域の飯田市及びその周辺に分布する一群は,咢裂片が花筒長より短く,また花柱付属突起が短い,などで特徴づけられ,上記の一群(近畿地方から北陸地方にかけて分布する狭義のヒメカンアオイ)からは区別することがでる。 中国地方西部(広島県)には,ヒメカンアオイが隔離分布することが報告されてきたが,これらは3倍体(他の個体群はいずれも2倍体である)で,花の形態においても咢裂片が極端に短くなるなどかなりの分化が認められる。 ヒメカンアオイの開花期は2月から3月と報告され,実際確かに多くの個体群でこのような時期に開花するが,長野県南部から愛知県北部・静岡県西北部にかけての地域では開花期を10月にもつ一群が分布する。このような開花期のずれは,生殖的隔離をもたらすという意味で分類群としてのまとまりを考えていくうえでも重要であるが,開花期の違いに対応するような形態的違いを今回の調査では見いだすことができなかったので,今後他の形質からの分類学的評価を進めていくことが必要であろう。
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