1994 Fiscal Year Annual Research Report
小笠原諸島と南西諸島に共通分布する植物広域分布種の分化
Project/Area Number |
05640790
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小野 幹雄 東京都立大学, 理学部, 教授 (80087155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 元巳 千葉大学, 理学部, 助教授 (00193524)
瀬戸口 浩彰 東京都立大学, 理学部, 助手 (70206647)
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Keywords | 小笠原フロラ / 島山興種分化 / 酵素多型(アイソザイム) / 遺伝的同一度 / 分子素統学 / 海洋島 |
Research Abstract |
本研究では小笠原島内に生育する広分布種について、アイソザイムなどの遺伝的マーカーを用いて遺伝的分化の程度を計ることで、広分布種に関する次の3つの仮説を検証することを目指した。 1)広分布種は小笠原に侵入してからの治癌が短いために遺伝的にも、形態的にも分化が進んでいない。 2)島への移住が頻繁に起こっていて、外部からの遺伝子の流入が続いている。 3)外部形態の変化が乏しいだけで、起源の古さや遺伝的分化は固有種と同様に起こっている。 本年度は昨年に引続き小笠原各地の広域分布種であるムニンテイカカズラとフウトウカズラを用いて、島の集団と日本本土の集団の間の遺伝的変異(遺伝的同一度)をアイソザイム多型の比較解析を通じて検証した。その結果テイカカズラでは0.80、フウトウカズラでは0.78という遺伝的同一度が得られた。この数字は、島で固有種にまで分化している植物で知られている多くの例が0.60前後であるのに比べると、かなり高い数値である。つまり広域分布種,では島に生育している集団と、そのもとになった可能性の高い本土集団との間で遺伝的分化があまり進んでいないことを示唆している。 いわゆる広域分布種は広い地域を通じて外部形態上の分化が低いため、分類学的に同一種と扱われて来たものであるが、それらの間の遺伝的変異も少ない(同一度が高い)と結論されたことで、上記の仮説の中少なくとも3か否定されたことになる。1と2の可能性についてはこの研究結果だけからは結論できないが、種子散布の様式などから推論すると1の可能性がやや高いかと思われる。この点は今後さらに別の角度からの検証が必要である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] A.Soejima, H.Nagamasu, M.Ito and M.Ono: "Allozyme Diversity and the Evolution of Symplocos(Symplocaceae) on the Bonin(Ogasawara) Islands." Journ.Plant Research. 107. 221-227 (1994)
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[Publications] M.Ito, A.Soejina and M.Ono: "Genetic Diversity of the Endemic Plants of the Bonin(Ogasawara) Islands" Proceedings of XVth International Congr.Bot.Sci.(1994)
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[Publications] M.Ito, A.Soejima and M.Ono: "T.Stuessy & M.Ono ed. Evolution and Speciation in Island Plants" Cambridge University Press (in press), (1995)
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[Publications] 小野 幹雄: "孤島の生物たち" 岩波書店、東京, 239 (1994)