1994 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ・メートルスケールの異種半導体薄膜積層構造に基いたフォノン光学素子の設計
Project/Area Number |
05650002
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Research Institution | Faculty of Engineering Hokkaido University |
Principal Investigator |
田村 信一朗 北海道大学, 工学部, 教授 (80109488)
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Keywords | フォノン / 超格子 / TH_Z / 共鳴透過 / ナノ・メートル |
Research Abstract |
前年度に解析を行った単一および二重障壁系におけるフォノンの静的共鳴透過特性並びにダイナミカルな透過、反射特性に関する数値結果を、解析的計算によって評価し、フォノン波束の時間的進みや遅れの起源を明らかにした。フォノン光学素子への応用上、特に重要な二重障壁系(同一のGaAs/AlAs超格子でバルクGaAs層をはさんだ構造)についての結論は次の通りである。この系においては共鳴周波数を含む入射波束に対し、透過および反射波束で共に大きな時間の遅れが生じる。その理由は障壁によって囲まれたバルク層内におけるフォノンの多重反射による効果として説明できる。またこの多重反射は共鳴条件を満たす周波数において大きな透過率の生じる原因でもある。具体的な時間の遅れは転送行列法に基づき、透過および反射フォノン振幅の位相に伴うphasetimeを求めることによって計算された。その結果、フォノン波束の遅れは共鳴周波数を中心周波数とするローレンツ型関数で近似的に記述されることが判明し、数値計算とのよい一致を示した。実際の透過および反射波束の遅れの大きさとしては、バルクGaAs層の厚さを各障壁の厚さ1024Aと同じとした時、〜300GH_Zに位置する共鳴周波数を含む波束(周波数5GH_Z幅で)に対し、500ps以上の時間に達する。これは単一障壁で生じるフォノン波束の時間の進みや遅れと比較して50倍以上もの大きさに相当している。一方、同様な解析を単一障壁構造における透過、反射波束の時間の進みと遅れに対しても展開し、その理由をフォノン振幅の干渉効果に基づき、定性的および定量的に説明した。これらの結果は、フォノン光学素子の設計基礎の確立の上で極めて重要な知見である。
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[Publications] S.Mizuno,M.Ito and S.Tamura: "Time Advance and Delay of Phonon Packet Scattered off Superlattice Systems" Japanese Journal of Applied Physics. 33. 2880-2885 (1994)
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[Publications] S.Mizuno and S.Tamura: "Transmission and Reflection Times of Phonon Packets Propagating through Superlattices" Physical Review. B50. 7708-7718 (1994)
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[Publications] S.Mizuno and S.Tamura: "Static and Dynamical Properties of SH Phonons Related to the Resonant Transmission through a Double Barrier Structure" Japanese Journal of Applied Physics. (in press). (1994)