1993 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ランダム超格子におけるフォノン透過率の入射角度依存性の理論解析と数値的検証
Project/Area Number |
05650048
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西口 規彦 北海道大学, 工学部, 講師 (40175518)
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Keywords | フォノン / 局在 / ランダム系 / 超格子 |
Research Abstract |
ランダム超格子を構成する層の界面でフォノンのモード変換が生じない場合について,転送行列法によりフォノンの透過率の入射角度依存性および周波数依存性を明らかにした。 その結果、共鳴透過の生じる周波数および最低の透過率の周波数が高周波数側へシフトし、それと同時に全周波数領域を通じて透過率が減少した。この透過率の振る舞いは、フォノンの入射角度がスネル則で与えられる臨界角度を越えない場合に得られ、それ以上の角度で入射した場合は透過率は全周波数領域で空間的に指数関数的に減少した。一方、透過率とその揺らぎの関係は、入射角度が臨界角度を越えない場合また越えた場合に関係なく、垂直入射の場合と同じであった。 転送行列法で得られた結果をグリーン関数法により解析した。層の界面に平行な方向には並進対称性があることを利用して,系の波動方程式を1次元系(垂直入射と本質的に同等)に写象した。この写象により,質量密度,音速を入射角度の関数として定式化し,本研究者が垂直入射に対して得たフォノンの透過率およびその揺らぎに関する結果を用いて斜め入射の場合の平均透過率およびその揺らぎについて定式化した。 解析的結果によると、透過率の周波数依存性の高周波数側へのシフトは、フォノンの波数ベクトルの超格子界面に垂直な成分が入射角度の増加により減少するためであることが解った。また透過率全体の現象は、入射角度の増加による超格子界面でのフォノンの反射率の増加によって説明されることが解った。透過率の平均と揺らぎの関係は入射角度が臨界角度を越えない場合には本質的に垂直入射の場合と同じと理解されるが、臨界角度を越えた場合ここで展開した理論は適用できなくなる。これは系の性質が臨界角を境に変わってしまったためである。臨界角以上でのフォノン系は電子系で最近議論されているインコヒーレントメソスコピック系と同等であり,新たな理論的解析が必要となる。これは今後の課題である。
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[Publications] N.Nishiguchi: "Phonon universal-transmission fluctuations,and localization in semiconductor superlattices with a controlled degree of order" Physical Review B. 48. 14426-14435 (1993)
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[Publications] Y.Ohtsubo: "Thermal conductivity in one-dimensional monatomic lattices with harmonic and quartic interatomic potentials" Journal of Physics:Condensed Matter. 6(in press). (1994)