Research Abstract |
われわれは、Pd-Al_2O_3-Al MIM(Metal Insulator Metal)トンネルダイオードが,高感度水素ガスセンサとして動作することを,前年度示した。動作原理は,水素ガスの吸着によりPd電極の仕事関数が低下し,このためトンネル電流が増加することに基づく。前年度における問題点は,真空中に置かれたPd MIMダイオードは,導入した水素をパージしたときのトンネル電流の回復時間がきわめて長い(20時間以上)ことであった。 本年度は,1.Pd MIMダイオード水素ガスセンサの回復時間の短縮化,および,2.アンモニアガスセンサとしての動作の可能性を検討した。 1.水素ガスセンサ回復時間の短縮化:Pd MIMダイオードは,大気のような酸素を含む雰囲気中で水素ガスセンサとして動作させると,真空中で動作させた場合に比べ,感度が約1/4に低下するものの,回復時間は数分以内に減少することが分かった。これは,Pd電極表面の水素が,空気中の酸素と反応して水蒸気となり,急速にPd表面を離脱するためと考えられる。したがって,Pd MIMダイオードは,空気中で動作させた場合,十分な感度と数分の応答時間を持つ水素ガスセンサとなることが分かった。 2.アンモニアガスセンサとしての検討:Pt,またはIrはアンモニアの分解触媒として働く。そこで,Pd電極表面にPt,またはIrを島状に蒸着修飾したPd MIMダイオードのアンモニアガスに対する応答を調べた。室温において,窒素ガス中へ0.9%混入したアンモニアガスに対し,トンネル電流の変化は50%であった。この値は,このダイオードの水素ガスに対する応答感度の1/10〜1/100程度である。また,Pt触媒なしの,Pd MIMダイオードのアンモニアに対する感度も同程度あることが分かった。これは,温室では,Ptはアンモニアガスを有効に分解する触媒として動作していないことを示す。Irに関しては,現在実験中である。 以上の研究成果の一部は,平成5年秋応用物理学会で報告し(29aZ/I9),J.Appl.Phys.に掲載予定である。
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