1993 Fiscal Year Annual Research Report
空中権に関わる都市の立体的な利用・制度とその運用実態に関する調査研究
Project/Area Number |
05650582
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 正美 京都大学, 工学部, 助教授 (50109021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大窪 健之 京都大学, 工学部, 助手 (10252470)
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Keywords | 空中権 / TDR / 総合設計制度 / 立体道路制度 |
Research Abstract |
平成5年度はおもに文献資料からの情報の収集・整理を行い、不動産の所有に対し旧来社会的に定着している概念と、空中権の利用に関わる法制度の具体的な内容について、日米間の比較を行った。 不動産に対する概念については、日本の場合、利用する権利は所有権に対立する不可分の権利であり、所有権が利用権に優先するという論理構成が採られている。一方の米国では、絶対的な所有権の概念は存在せず、土地の利用権が重視される考え方が採られているため、所有と利用の対立はもとより生じない性質を持っている。このため米国では空中権を土地利用権の構成要素として当然に認められる財産権とする一方で、日本では土地の所有が利用に優先するために、空中部分の利用権だけを所有権と分離して認めるには至っていない。 具体的な法制度でみると、米国での「エア・ライト」の譲渡や賃貸は、原則として公益上の制限を満たしていれば当事者同士の自由な契約によって行え、「開発権の移転制度(TDR)」についても、歴史的建造物やその他の都市環境の保全の目的で、現在多くの地方自治体で採用されている。これに類する日本の法制度については、「区分地上権」、「建物区分所有法」があるが、いづれもその所有を伴うことが原則とされている。開発権の移転制度に関しても「特定街区制度」、「一団地の総合的設計制度」、「地区計画における容積率の適性配分制度」によって一部可能であるが、容積率の適正な売買や相当遠隔地間での移転を認めるものではない。その他「総合設計制度および市街地住宅総合設計制度」、「立体道路制度」が創設されてはいるが、米国の場合はあくまで都市環境を良好に維持することを主目的として空中権の概念が組み立てられているのに対し、我が国の場合は個人の占有を克報するための空間の高度利用に偏りすぎているといえ、ここに日米の不動産に対する利用と所有の概念の違いが明確に現われていることが理解された。
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Research Products
(1 results)