1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05650600
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
小野木 重勝 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (10043598)
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Keywords | 日本近代建築 / 和風 / 宮廷建築 / 建築技法 / 明治前期 |
Research Abstract |
明治前期和風宮廷建築のうち、本年度は、増宮御殿(明治15年)・明宮御殿(明治18年)・塔島離宮(明治19年)・二位局御殿(明治21年)の4件の離宮・御殿について調査した。基本資料として、宮内庁書陵部蔵「内匠寮工事録」所収の各工事録を閲覧・調査し、工事仕様書を中心とする主要資料についてはマイクロ複写を行った。 前年度同様、各建物について、平面構成・材料・構造技法・装飾技法・施工技法・担当技術者・施工業者・職人等について調査・研究を行った。加えて、前年度の青山御所・賢所御座所・東伏見宮邸日本館・有栖川宮邸・会食所・滋宮御殿と併せて、明治前期和風宮廷建築全般について、総合的に検討した。 明治前期の基本資料の現存状況は、明治後期に比して必ずしも良好ではなく、極力他資料の探索に努めたが、不明点も多く、十分な成果を収めたとは言い難い。 しかしながら、明治前期和風宮廷建築の多くが、江戸時代の木造伝統技法を継承する一方で、明治14年頃になって、基礎杭打・煉瓦基礎・コンクリート地業・ボールト補強等の洋式構法や、暖炉・絨氈敷等の洋式装飾を導入した和風建築が存在することが判明した。これらの洋式技法は、当時、皇居洋風謁見所の設計に参画したお雇外国人コンドルが提唱した構法である。彼の提唱した構法は、明治宮殿(明治21年)やその関連建物で採用されたが、明治宮殿に先行して、他の和風宮廷建築で試行されている事実は、従来全く知られていなかった。したがって、明治宮殿完成前に培われた宮内庁内匠課の設計手法や技術力が、明治宮殿に大きく反映されているであろうという当初の仮定を実証する有力な証左を得ることができた。これは、今回の研究における最大の収穫であったということができる。
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