1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05650682
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Research Institution | University of Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
森井 賢二 大阪府立大学, 工学部, 助教授 (10101198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 利之 大阪府立大学, 工学部, 助手 (20219372)
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Keywords | 誘電体薄膜 / 非晶質薄膜 / 比誘電率 / 誘電損失 / 誘電率の温度依存性 / 誘電率の周波数依存性 / 誘電緩和 / チタン酸ストロンチュウム |
Research Abstract |
高比誘電率、高絶縁性、平坦な周波数特性を備えた誘電体薄膜は、各種デバイスの基本構成に重要な役割を演ずる材料として大きく期待されている。バルク結晶における誘電特性はその結晶構造、粒径、粒界相等の諸因子により制御することが可能であるが、薄膜誘電体では、製膜条件、熱処理条件からくる制約が強く、そのような結晶制御が困難であるために、薄膜の誘電特性は低くとどまっている。本研究では、結晶材料のこのような難点を避けるために、非晶質体のもつ比較的自由度の高い構造に着目し、非晶質構造の短範囲規則性を熱焼鈍、不純物のド-ピング等により変化させることによる非晶質薄膜の誘電特性制御の可能性を検討することをねらいとしている。とくに、本年度の課題はSrTiO_3,Ba(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3等の非晶質誘電体薄膜について、真空焼鈍に伴う電気的、光学的特性の変化および非晶質の局所構造ないし欠陥と誘電特性との相関を明らかにすることにある。 真空焼鈍した非晶質SrTiO_3薄膜は焼鈍温度に依存して、室温で80-220程度、約650Kで350程度の高い比誘電率と、周波数100kHz以下での大きな誘電緩和を示すことが明らかとなった。真空処理により、光学的バンドギャップ(約2.5eV)には大きな変化は認められなかったが、バンドテイル部の光吸収が増大し、電気抵抗率が10^<11>Ωmから10^6Ωm程度まで低下した。誘電緩和の活性化エネルギーは低温側で約0.2eV、高温側で約1eVであった。これらの結果は真空焼鈍処理により非晶質薄膜中に形成された荷電酸素空孔の効果により説明できることが知られた。酸素欠損の導入によりSrTiO_3非晶質構造中のTi^<4+>イオン近傍に発生する静電的、弾性的構造変化を通して、非晶質誘電体薄膜の誘電特性が制御できる可能性が示されたと言える。
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