1993 Fiscal Year Annual Research Report
機能性酸化物の酸素吸収・放出特性およびそれに及ぼす溶解水素の影響
Project/Area Number |
05650729
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八尾 伸也 大阪大学, 工学部, 助教授 (90029299)
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Keywords | ITO / 透明電導体 / 酸素吸収 / 酸素放出 / ドメイン構造 |
Research Abstract |
(Sn/In+Sn)=0.1のITO(In_2O_3+SnO_2)粉末を空気中,1500℃で100h焼鈍し,C-希土構造の単一相にした。この粉末試料を10^<-4>atmの酸素分圧に設定した高感度酸素分析装置内にセットして,600℃において試料に酸素を吸収させた。この試料を100℃から1000℃まで定速で昇温して酸素の放出を測定し,さらに600℃まで降温して酸素の吸収を測定する。さらに100℃まで降温して,その後再度昇温して測定する実験を繰り返した。以上の実験より下のことが明らかとなった。(1)800℃までの昇温では酸素の放出,吸収量および放出開始温度は変化しない。(2)一度,1000℃に昇温すると酸素の放出量および開始温度が変化する。すなわち,動力学的挙動の領域があり,これは800℃以下に存在する。(3)800℃以上に熱力学的挙動を呈する領域がある。この熱力学値は1000℃への昇温を繰り返すと変化する。この現象は100℃〜800℃〜1000℃とステップ状に昇温する実験により再確認された。粉末を1500℃で100h焼鈍した後,降温過程の1000℃で50h焼鈍した試料について同様の酸素放出吸収実験を行い,1000hで焼鈍することによりITOの熱力学的性質が変化していることを再確認した。しかし,100℃〜800℃の酸素の放出挙動は上記実験の延長上になかった。すなわち,(5)100℃〜800℃における酸素の放出における動力学的変化は繰り返し昇降温の影響であることが明らかとなった。また,1500℃で50h焼鈍した後空冷し,再度1500℃で50h焼鈍した試料を出発試料にすると,100℃〜800℃における酸素の放出開始温度は迅速に高温側へと移動した。以上の結果を統一的に説明するには,各温度に対応したドメイン構造の概念の導入が必要である。これらの多くのドメインが昇降温により複雑に変化する。この履歴はメモリーとしてどこかに記憶されているため複雑な現象を誘起する。この結果,酸素分圧と酸素濃度は一義的には決まらないことが分かった。
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