1994 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙における野菜栽培のための養水分供給システムと成長制御法の研究
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05660022
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 秀幸 東北大学, 遺伝生態研究センター, 助教授 (70179513)
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Keywords | 宇宙 / 根 / 水分屈性 / エンドウ / 水ポテンシャル / カルシウム / アブシジン酸 / 細胞壁 |
Research Abstract |
宇宙の微小重力環境下で植物を育成する場合の根の成長制御法に根の水分屈性を利用するため、根の水分屈性の発現機構についての詳細な解析を行った。 根の水分屈性が根冠部における浸透圧勾配(水ストレス勾配)によるものかどうかを検討するために、1mm^3の大きさの1%寒天片に各種の濃度のソルビトールを含ませて重力不感受性のエンドウ突然変異体の根の根冠部に投与し、屈曲を調べた。その結果、根冠の片側に与えられた0.5-1.5MPaのソルビトール寒天片によって、根はソルビトール寒天片とは反対側に屈曲し、根の水分屈性が、根冠における水ストレス勾配の感受を介して発現するものであることが証明された。また、同じソルビトール寒天片の伸長帯片側への処理は正の水分屈性を誘発しなかった。 一方、根冠の片側にCa^<2+>を濃度別に処理した場合、根はCa^<2+>ム寒天片と反対側に屈曲し、このCa^<2+>による根の屈曲は、一定の水ストレスによって促進されること、さらにソルビトールによって誘発される水分屈性はCa^<2+>キレート剤の処理によって阻害されることも見出された。根の水分屈性はアブシジン酸(ABA)の前処理によっても促進された。これらの水分勾配の感受、Ca^<2+>及びABAの作用部位はともに根冠であることがわかった。 根の水分屈性における偏差成長の仕組みを明らかにするために、根の伸長(屈曲)部位における高湿度側及び低湿度側の組織の水ポテンシャル、浸透ポテンシャル、膨圧、降伏圧、細胞壁の伸展性を測定した。その結果、根の低湿度側と高湿度側の間には、水ポテンシャル、浸透ポテンシャル、膨圧、降伏圧の差は認められなかった。しかし、細胞壁の可塑的伸展係数は、高湿度側よりも低湿度側で有意に大きいことがわかった。これらの結果から、水分勾配は根冠によって感受され、新頂部の細胞壁伸展性を変かさせるような情報が伸長帯に伝達されて水分屈性が起こり、この情報伝達系にCa^<2+>及びABAが関与するものと考えられる。
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[Publications] Takahashi,H.: "Intensity of hydrostimulation for the induction of root hydrotropism and its sensing by the root cap" Plant,Cell and Environment. 16. 99-103 (1993)
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[Publications] Takahashi,H.: "Hydrotropism and its interaction with gravitropism in roots" Plant and Soil. 165. 301-308 (1994)
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[Publications] Takahashi,H.: "Gravitropic mutants in studying plant growth in space" Advances in Space Biology and Medicine. 4. 127-158 (1994)
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[Publications] Oyanagi A.: "Interactions between hydrotropism and gravitropism in the primary seminal roots of Triticum aestivum L." Annals of Botany. (印刷中). (1995)
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[Publications] Takano,M.: "True hydrotropism:sensing of a gradient in water potential by the root cap." (発表予定).
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[Publications] Hirasawa,T.: "Control mechanism of differential growth in hydrotropism of pea roots." (発表予定).
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[Publications] 森田・阿部 編 (分担執筆): "根のハンドブック" 根研究会, 232 (1994)