1994 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯と温帯の水田生態系におけるトビイロウンカの発生動態の比較
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05660048
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
澤田 裕一 滋賀県立短期大学, 農業部, 助教授 (90259391)
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Keywords | トビイロウンカ / 個体群動態 / 水田生態系 / 稲害虫 / 天敵 / インドネシア / ジャワ島 |
Research Abstract |
インドネシア・ジャワ島の平野部の稲同期栽培地帯と内陸部の周年栽培地帯で、トビイロウンカの個体群特性を比較分析した結果、以下の三点について顕著な相違が認められた。 1.両地域のピーク世代の密度レベル:同期栽培地帯では、ウンカの初期密度(外部からの飛来密度)が低いにもかかわらず、水田内での密度増加率が高いため、ピーク世代ではしばしば被害が発生するような高密度に達した。生命表分析の結果、卵寄生蜂やクモ類などの多食性捕食者の密度差が、両地域でのウンカの密度増加率やピーク世代の密度レベルを決める基本的要因であることが判った。 2.地域内の場所間での密度変動:1)同期栽培地帯(第一作期)では、ピーク世代密度の場所間の変動は、初期の飛来密度によってほぼ決まることが判った。このことは、初期密度によるピーク世代密度の予測が可能であることを示している。2)周年栽培地帯では、密度増加率が場所間で大きく変動するため、初期密度とピーク世代密度の間に高い相関は認められなかった。密度増加率の場所間での変動を決める要因として、水田内の水利条件(降水量と灌漑条件によって決まる)が重要であることが判った。 3.密度調節過程の作用:1)同期栽培地帯(第一作期)では、ピーク世代にしばしば被害が発生するような高密度に達するため、日本など温帯地方の個体群で示されたように、作期の後半に長翅成虫の移出や幼虫死亡の増大による密度調節過程の作用が認められた。2)周年栽培地帯や同期栽培地帯の第二作期では、初期の比較的低い密度で、密度調節過程の作用していることが判った。卵巣解剖法により、長翅成虫の水田間での移動分散が密度依存的に生じることが示され、このことが、初期の低密度での密度調節要因として重要だと考えられた。
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