1994 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫寄生性線虫における感染態幼虫の誘起と生存機構の解明
Project/Area Number |
05660054
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
近藤 栄造 佐賀大学, 農学部, 助教授 (60039336)
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Keywords | 昆虫寄生性線虫 / Steinernema / 感染態幼虫誘起 / 不良環境下生存 / 共生細菌 / 無菌培養 / 発育調節 |
Research Abstract |
Steinernematidae科昆虫寄生性線虫の感染態幼虫(IJ)は、昆虫に感染する唯一の発育ステージであり、その誘起と耐性は、線虫の再感染・種族維持や害虫防除効果を決める重要な要因となる。平成6年度は、前年度の知見を基に、共生細菌(Xenorhabdus spp.)不在下におけるSteinernema carpocapsaeの発育とIJ出現に関する実験を中心に進めた。(1)自活性線虫Caenorhabditis elegans用の液体培地中でのS.carpocapsaeの発育は遅く、成虫のサイズは小さく、IJはほとんど誘起されなかった。しかし、この培地に滅菌したハチミツガやハスモンヨトウの終齢幼虫を添加すると、共生細菌を餌とするモノゼニック培養の場合よりも多い線虫が得られた。すなわち、硫酸アミカシンとペニシリンGカリウムの混合液(各5mg/ml)で表面殺菌後に液体培地に接種した抱卵雌成虫は正常に発育・産卵を続け、線虫密度は次第に高まり、接種後8〜10日でIJが出現し始めた。この結果より、第一世代成虫が正常に発育できないほど培地栄養条件が悪い場合には第二世代成虫によるIJ産生にほとんど至らないこと、またIJの誘起には共生細菌の存在やI型からII型への菌相転換は必須でないことが明らかになった。(2)無菌飼育したハチミツガおよびハスモンヨトウの終齢幼虫に前記の簡易無菌培養法で得たIJを接種段階を変えて経口投与した結果、共生細菌による敗血症によらなくとも、線虫自体に殺虫力があることが定量的に明らかになった。また、無菌昆虫死体内で無菌線虫は、あたかも「真の寄生者」のように、昆虫組織に著しい影響を及ぼすことなく発育したが、その発育は保菌線虫より著しく遅く、IJの出現は接種後16日でも非常に少なかった。これらの結果より、昆虫体内での線虫の発育とIJ出現には、線虫と共生細菌の共同作用による宿主の防御反応抑制と昆虫組織分解による線虫への栄養提供が大きく関わっていることが示された。(3)土壌線虫の多くは、最も大きな生存制限要因となる乾燥条件下に置かれると、体をコイル状に丸めて外界との接触面を減らして乾燥に耐えることが知られている。土壌線虫であるSteinernema属線虫3種についてIJの乾燥下生存力とコイル化との関係を調べたが、両者の間に明瞭な関連は認められず、昆虫寄生性線虫におけるコイル化の生理生態的意義は明らかにできなかった。
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[Publications] Kondo,E.and R.Razak: "Infectivity of entomopathogenic nematode,Steinernema carpocapsae,on the mango shoot borer,Rhytidodera simulans" Jpn.J.Nematol.23. 28-36 (1993)
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[Publications] Ishibashi,N.,S.Takii and E.Kondo: "Infectivity of nictating juveniles of Steinernema carpocapsae (Rhabditida : Steinernematidae)" Jpn.J.Nematol.24. 21-29 (1994)
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[Publications] Ishibashi,N.,X.-D.Wang and E.Kondo: "Steinernema carpocapsae : Poststorage infectivity and sex ratio of invading infective juveniles (Rhabditida : Steinernematidae)" Jpn.J.Nematol.24. 60-68 (1994)
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[Publications] Kondo,E. (分担執筆): "Use of Biological Control Agents under Integrated Pest Management" Food and Fertilizer Technology Center,Taipei (未確定), (1995)